高校生との真剣勝負

今日は静岡の高校で模擬授業をしてきます。

久しぶりに高校生との「真剣勝負」で楽しみです。
というのも、僕は実は、大学生よりも高校生とのつきあいの方が長い
からです。

大学1年生の時に浪人生に教えていらい、「インチキ英語講師」業を
8年くらいしてきました。なぜ「インチキ」かというと、もちろん受験に
受かる英語は教えていたつもりですが、恩師T先生に比べたら英語力
は足下にも及びません。そこで、英語を教える以外にも、勉強法の
コーチングや、進路指導に三者面談、あげくの果てには人生相談まで
結構精力的にこなしており、そっちの方がむしろ定評があったからです。
英語で試験に落ちた子も小論文指導で受かった時など、いったい僕は
何屋なんだろう、と思ったほどです・・・。

高校生って「知りたい」「何かおもしろいことしたい」という望みは強くある
のだけれど、実際に目の前にある「受験」という足かせを前に、なかなか
一歩を踏み出せず、また受験にエネルギーの焦点を当てにくい年ごろ
でもあります。もっと言えば、学校の授業にうまくマッチングしなかったり、
自分のリズムがつかめず、「どうせ自分なんて」とマイナスの評価を自分
に貼り付けている高校生にも数多く接してきました。そして、そんな彼ら
彼女らをいかに短時間で「ひっくり返すか」に命をかけていました。

受験勉強は、大学に入った後の勉強に比べたら、実はめちゃくちゃ楽です。
もちろん覚えることや、こなすべき事はたくさんあります。しかし、小論文
以外では、答えが決まっているのです。だって、×かで割り切れる
問題で、どれほどの水準が問われているか、が過去問で公表までされ
ているのですから。粛々と逆算して、要求水準にどう近づけていくか、
を本気で冷静に考え、イメージがつけば、あとは黙々とその要求水準に
まで登り詰める努力をすれば、結構な確率でその努力は報われます。

「そんなこと言ったって、うまく成績が上がった試しがない」という人は、
自分が何がどこまでわかっていないのか、の分析不足。中一の英語の
レベルがわからなかったら、高三でも予備校生でも、そこから勉強し直し
たら、一年くらいあれば目覚ましい改善が期待できます。実際にそうやって
一年で学力を恐ろしく伸ばして、彼ら彼女らのあきらめをひっくり返す、
ことのお手伝いをしてきました。

そして、大学生の前で伝え始めて、改めて思うのです。高校と大学は
違う、と。大学で僕が担当する「地域福祉論」「ボランティア・NPO論」
とも、一つの正答なるものがない、議論の多い分野です。その国の
社会情勢や、社会政策の力点の置き方によって、中身はどんどん
変わっていきます。現在進行形の分野です。答えを確定させることも、
一元化させることも出来ないし、それをしたら危険な分野です。つまり、
一つの答えを説明することよりも、様々な考えや現実を学び、そこから
一つの自分なりの考えを導きだすことが求められる分野です。

とはいえ私が出会う大学の学生さんの中にも、「考えること」を暗記
で乗り切ろうとしてどつぼにはまっている人、どうやって考えていい
のかわからず、四苦八苦している人、もいます。そんな彼ら彼女らに
「考える練習」の素材を提供するのも、大学での教員の役目だ、と
思っています。大学の授業でも、常にこのことは意識して、授業の
中に「考える練習」を取り入れようとしています。

だからこそ、高校時代までに○×問題の訓練をある程度行うことが
意味がある、と明日は高校生にお伝えするつもりです。答えのない問い
に向き合うためには、答えのある問いの解き方をわかっていて、思考
方法について色んなパターンを知っていた方が得です。自分で推論
するための合理的思考を導き出す訓練にもつながります。なので、
ちゃんと受験勉強を通じても「ものを考える訓練」をし続けてほしい、
そう、高校生に伝えにいくつもりです。

少しは響いてくださる方がいればいいのだけれど・・・。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。