しゃべればしゃべるほど

さっきまで現場で話をするチャンスがありました。

そこは地域で障害者を支援していらっしゃる拠点の場。その現場だけでなく、同じ職種で働いていらっしゃる方々が、新しく変わる予定の「障害者自立支援法案」に関する勉強会に多数ご参加くださいました。僕はこの法案に大いなる疑問を抱いているのですが、それを含めて「ゼロからわかる自立支援法案」というお題を頂き、久しぶりにこの問題を話すチャンスが与えられました。この法案が出てきた昨年秋の「改革のグランドデザイン案」からずっとこの問題を追いかけて来たのですが、関西での講演のチャンスはあったものの、山梨での講演は初めて。はらはら、どきどき、で現場に赴きました。

でも、実は今日は万全、ではなかったのです。レジュメも、直前にファックスすればいい、と伺い、ギリギリまで逡巡していました。現場を離れて、ちゃんと最新情報も復習しなければならないし、何より聞き手の皆さんにちゃんと価値あるお話が出来るか、と不安でした。レジュメをファックスしたのが、ギリギリの講演1時間前。結局レジュメ作りに逡巡して、くたくたになって、現場に赴きました。あんパンとおにぎりを食べながら来たモノの、ちゃんと現場でお話がまともに出来るか、かなり不安に思いながら、研修会は始まりました。ついでに言うと、しゃべる直前は、夜遅いスタート、っていうのもあって、ぐったりしていました。

ただ、自分で言うのも何なのですが、現場に強いタケバタ。というより、単にしゃべり好きなだけかもしれません。講演を始めるや否や、エンジンがかかってしまいました。現場の方々が業務を終えて駆けつけてくださったので、スタートが8時過ぎ、でしゃべり始めたらとまらず、9時半ましゃべり続け、その後質疑応答でも1を聞いて20倍しゃべ利続けて、気がつけば10時半。現場の方々との真剣勝負が楽しくって、ついついしゃべりたくってしまいました。長い研修会になって、現場の方々、すいません。

でも、何が嬉しいって、講演の後、現場の職員の方々から「現場でもがき苦しんでいる、その実感にそって話をしてくれた」という評価をいただけたこと。現場から離れて象牙の塔に籠もりがちのタケバタにとって、現場の方々からこのように評価されるほど、嬉しいことはありません。まだまだ、腐っちゃいないな、と再認識するチャンスを与えられた一日でした。だから、しゃべればしゃべるほど、現場の方々からのエネルギーをいただいて、どんどん元気になっていく私。話す前にぐったりしていたのがまるで嘘のよう、話し終わる頃にはめっちゃテンション高く、終わった次第であります。

僕は、亜流かもしれませんが、現場と理論の往復を絶対自分の基本スタンスにしたい、と願い続けています。その際、現場の方々の「もがき」「苦しみ」を、何とか抽象的普遍的言語に置き換えながら、制度政策の改善につながるように、言語化のお手伝いをする、というのが研究者の役割だと思うのです。なので、現場の方々とのやりとりのチャンス、そして、現場の方々の実際の「もがき」に触れ、伺うチャンス、これほど貴重な機会はないと思っています。あくまでも、しつこく、しぶとく、現場発、を守り抜いていきたい。そう願っているタケバタでした。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。