国際免許と地域貢献

ブログの右側にあるカレンダーを見ていると、今月、なぜか月曜日はブログを書いていない。ついでに言えば、木曜日も全く書いていない。別にたいした理由があるわけではないのだろうが、今日は余裕があるので、月曜日のブランクを埋めてみようと思う。

金曜日に出張から帰ってきて、その後大学で仕事をこなし、土曜は講演、日曜日はオープンキャンパスと予定がみっちりだったので、今日は「臨時休業」。朝、奥さまを送って少し仮眠をとった後(至福の二度寝!)、週末から出かけるアメリカ出張に向けて、アポイントのメールを考える。昔、ジャーナリストの師匠が「アポさえ取れたら、取材の半分以上は終わったも同然」と仰っておられたが、確かに特に海外の場合、自分が行きたい場所にねらいを定めても、うまくアポを取って、連絡を付け、日程を固めるまでの行程がめっちゃ大変だ。北欧では、通訳の方にコーディネーションのお世話になることもあったが、自分でそのまねごとをしてみると、改めてその方々のご苦労に敬意を表したくなる。ほんと、骨折り仕事です。でも、ようやく日程がボチボチ固まってきて、今回の調査も面白そうになってきた。ただ、予習がまだ全然進んでいない・・・。あと3日で、さてどこまで追い上げが効くかしら・・・と書いているが、きっと機内と現地でも、にわか勉強は続いているのだろう。

英語のメールを書いて、お風呂と食器を洗った後は、素麺をスルッと食べて、アクセラ号で出かける。今回のアメリカ調査は移動が多いので、レンタカーを借りることにした。そのために、国際免許証の手続きの必要があるのだ。スウェーデンではボルボステーションワゴン(勿論レンタカー)でかっ飛ばしていたが、一方通行の多い大都会、サンフランシスコでちゃんと運転で出来るかが、ちょっと不安。でも、最近は日本語ナビ付き、というのもあるので、もちろんそれを予約する。日本ではナビなど必要に感じず、実際アクセラ号にも付けていない。地図を見て、道を身体で覚える方が、後々楽だ、と古くさくも考えているからだ。でも、さすがに英語圏で、左ハンドルで、慣れない街で・・・となると、断然こういうサポートがあった方が、迷子にならなくて済む。文明の利器に心からの感謝、である。

運転免許センタージム自宅へと運転しながら、昨日のオープンキャンパスで感じたことを、思い出していた。昨日も政治行政学科志望の学生がたくさん来てくださった。僕はまた、模擬面接を担当していたのだが、12時半から3時半くらいまで、ひっきりなしに対応していた、と思う。そのとき、前回も感じたのだけれど、今回もやはり感じたのは、「警察官」「消防官」「役場職員」の志望者の多さ。で、模擬面接なので、「なぜ○○になりたいのですか?」と聞くと、多くの人が判で押したように、「地元で地域に貢献したいから」「人の役に立ちたいから」とお答えになる。で、もう少し突っ込んで、「でも地域に貢献したいのなら、○○にならずとも、福祉系や環境保全系、教育系の仕事などもあるだろうし、フルタイムで貢献しなくても、自治会とかNPOとか、色んな貢献の仕方があるんじゃないですか?」と聞くと、多くの方がまごつかれる。「やっぱり安定しているから」という答えもあるが、「田舎じゃそれ以外の仕事があまりないから」という答えも返ってきた。それで、考えこんでしまったのだ。

テレビを付ければ小泉首相は「官から民へ」「小さな政府へ」「公務員を削減する」・・・と繰り返す。その是非は別として、では地方で、官の仕事が本当に民に委譲されるのか、地域を再生するための、地域で豊かに暮らすための、新たな仕事創りをこの国はどれだけ真剣に考えてやってきたのか?それを考えてしまうのだ。模擬面接の場で、「ええかっこ」している部分もあるかもしれないのだけれど、多くの学生さんが「地元のために何かしたい」「人の役に立つことをしたい」と答えてくださっている。こんな志がある学生が多いのに、なぜその受け皿は公務員、と短絡的直結をするのか? それはその学生さんの考えが浅はかだから、ではなくて、むしろ、実際に地方に行けば行くほど、公務員以外の職業が、やはりかなり危機に瀕しているからではないか? そんな予感がしてしまう。

もちろん、だからといって、では公務員を増やすことが解決策だ、と単純化するつもりもない。ただ事実として、大都市一極集中が叫ばれて久しいが、こうして自分の育った地域で仕事したい、と思っている若者も、少なからずいるのだ。その際に、彼ら彼女らが胸を張って行える仕事が、地元にどれだけあるのか? グローバライゼーションの波の中で、そういう地域の活力がどれだけ減退しているのか? 学生さんが地元で夢を持って働ける職場がどれほどあるのか?・・・それを、学生さんとのやり取りから感じはじめたのだ。

地域で安心して働ける、というのも、地域福祉を考える上で、大きなキーワードの一つだ。せっかく山梨に来たのだから、少し日本の地方(地域)の持つ力、についても、これから考えてみよう、と思う。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。