緊張と弛緩

今日は久しぶりに午前をお休みにした。

昨晩は真夜中まで八ヶ岳の麓で議論をしていて、帰ってきてもテンションが高かったので夜中からキムチをバリバリ食べながら、食器を洗ったりゴソゴソ二時ぐらいまでしていた。そしてお風呂にも入らず寝てしまったので、当然翌朝はどろどろべたべた。10月中頃から毎週末仕事が続いて、疲れも溜まっているし、明日は長野で仕事だし・・・と思うと、ここらで半日休んでおかないと体が持たない。なので、パートナーを仕事場に送り届けた後、ほったらかし温泉へ。

抜けるような青空の下、素っ裸で甲府盆地を眺めていると、疲れも吹き飛ぶ。目をつぶれば心地よい日差しがまぶたにあたり、体はじんわり温泉で暖まり、極楽状態。太陽の日差しは体の隅々にまであたっていて、本当に気持ちよい。村上春樹の小説の中で出てくる、主人公の男性のサンベイジングの描写がふと頭によぎる。これでピナコラータでもあったら・・・あ、それはハワイのことだっけ。南国に久しぶりに出かけたくなってきた・・・。などとくだらないことを考えているうちに、時間はあっという間に過ぎていく。

体はリラックスできたので、次に出かけたのがインフルエンザの予防注射。この春、甲府に引っ越す直前にアメリカ調査に出かけたのだが、その最終日、飛行機の中で風邪を引き、しかもそれがインフルエンザだった。帰国後1週間で引っ越しというキツイ日程で、そのころは送迎会を連日のように主催して下さっていた。なのに肝心な時に風邪をこじらせてしまい、結局、お世話になったある方が開いて下さった送迎会を、主賓の私が蹴ってしまった。そんな「前歴」があるので、今年も予定は年末まで詰まっているし、ここで風邪をひいちゃあたまらん、と予防接種に出かけたのだ。チュッと一針3000円。これでインフルエンザが予防できるのなら、ありがたいものだ。その後、アクセラ号を洗車機にかけた後、大学へ。

昼から原稿書きをしている最中、元の教え子から久しぶりのお電話。どないしたん?と声を聞くと、受話器越しに泣いておられる。色々聞いていると、今の職場で、ある利用者への支援に関して理不尽な処置がなされ、そのことで腹が立っている、とのこと。「私が怒られるのはいいけど、利用者さんの問題を解決する方向に進んでいないのが腹が立つ」 なんというまっとうな怒り。こういう真っ直ぐな気持ちを、入職1年半経っても持ち続ける彼女は実に頼もしい。ただ、そういう気持ちを持ち続けるためには、真っ直ぐさ、だけでは限界があることを知っている老獪なタケバタなので、少し入れ知恵をしてさしあげる。入れ知恵、と言っても別にたいしたことではなく、組織間不連携や責任の所在のなさを超えるための当座の処方箋をお示しした上で、「今日はお友達と飲んで、愚痴を言いまくって、すっきりして眠る。で、気分を落ち着けてから、明日以後、クールに問題を処理するべし。熱い気持ちは大切だけれど、頭はいつでもクールに分析的でないと乗り切れないよ」と申し上げる。怜悧な彼女のことなので、多分明日以後、復活なさっておられるだろう。

こうやってたまには頼りにされると思うと、こちらも背筋がピンとする。ピンとしたついでに、うねうね考えていた原稿の原案もとりあえず書き終える。こうやって書いたり、話したり、としているうちに頭が活性化するタイプ(逆に言えば書いたり話さなければまとまりのないタイプ)のタケバタにとって、午前中にエネルギーチャージを終えた上で、午後は大変エンジンがかかった良き一日であった。まさに弛緩と緊張のメリハリある一日。肝心の来週の授業の組み立ては積み残しになったが、ま、それは日曜日にのんびり考えるとしよう。さて、今日は白ワインに合う魚でも探しに行きますか。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。