今年の三大ニュース

年の瀬にあたり、今年の三大ニュースを発表します。

と書きながら、実は結構テンションが低い。なぜってさっき結構長く書いたのに、アップロードの時にへまをして、文章がいっぺんに全部消えてしまった。こういうのって、がっくりきますよね。でも、今から露天温泉に出かけた後に、実家でごちそうと大酒を飲む予定なので、つべこべ言っている暇もない。しかも、どう考えても新年までにパソコンに向かう時間もなさそう。なので、泣く泣く!?、さっきの一〇分の一くらいの分量で、今年の三大ニュースのご報告をしておきます。

山梨への引っ越し
もちろんこれが最大ニュース。非常勤から常勤へ、人間科学部・福祉学科系統から法学部政治行政学科へ、西宮から甲府へ・・・様々な移動があった。たくさんの発見や気づき、もがき、がないまぜになった9ヶ月間だった。しかし、本当に住めば都、とはこのことで、山梨の食べ物やワインも堪能し、法学部でいろんな先生方からたくさんの刺激をいただき、一年目からこの状況を大きく楽しめている。もちろん、学生さんとの真剣勝負も実におもしろい。来年は腰を落ち着けてもう少しじっくり仕事をしたい、と願っているのだが・・・。

アクセラ号との出会い
なんせ、このアクセラ号は本当に乗り心地がよい。甲府に引っ越す折りはスターレットさんに荷物も山積みしながら中央道を走っていたが、今回は逆の道をアクセラ号で疾駆する。高速走行の安定感と馬力の良さにほれぼれしながら、昨日は夜中の中央道を突っ走っていた。実に気持ちよい。もともとずっとトヨタの中古車に乗り続けてきたのだが、初ボーナスをいただいて、「せっかくだから新車を買いたい」という欲望がもたげてきたのだ。で、カローラフィールダーとアクセラで迷ったのだが、アクセラ号のあまりの馬力の良さと魅力的デザインの虜になって、生まれて初めてマツダの車に乗っている。

ノーマライゼーションについて考える
障害者自立支援法を巡って、昨年10月から厚労省は山ほど資料を出してきた。僕もその一部をプリントアウトしただけで段ボール箱二箱分になる。今年はこの自立支援法関連で講演もあちこちでさせて頂いた。この自立支援法の厚労省資料を眺め続けていて、90年代にずっと言われていたある言葉がすっかり抜け落ちていることを一部識者は指摘している。それが「ノーマライゼーション」についてである。

ノーマライゼーションは、スウェーデンではお題目の思想ではない。障害を持った人もふつうの人と同等の生活が出来るように、所得保障や住宅・日中活動の提供を実態的に保証する、ということを法律に明記している。そして、その法律に基づいてお金も人も社会資源も構築されている。つまりノーマライゼーション思想が制度政策、そして現場へと降りていく、上からのノーマライゼーションの実体化が30年くらいかかって展開されてきたのだ。

一方日本では、厚労省は90年代に国の政策として「障害者プラン-ノーマライゼーション7カ年戦略ー」なるものに取り入れられることもあったが、結局スウェーデンレベルの所得保障や地域移行を果たす前に、既に公的文章から消えてしまった。僕はこれをもって日本のノーマライゼーションが完了した、なんてとうてい思っていないし、多くの障害関係者も思っていない。

ただ、では日本では全くその動きがなかったのか、というと、その逆だ。博論で調べていて感じたのだが、日本では現場レベルの、下からのノーマライゼーションが各地で展開されている。国の政策が「頼りない」から、地域福祉を実体化するために、各地で当事者・支援者・家族・行政の垣根を越えた、地域変革の動きが各地で様々に行われてきた。そして、それを制度が後追いする、というのは、富山の託老所「この指とーまれ」から富山方式なる言葉ができ、それが小規模多機能方式として介護保険や自立支援法に取り入れられたことからも明らかだ。

で、今年考えていたのは、「では自立支援法が施行された後、日本なりの下からのノーマライゼーションを実現するためにはどうすればよいのか?」ということ。様々な地域で話をさせて頂いた時も、いつもこの点についてはふれていた。「地域自立支援協議会」といった自立支援法の枠組みは、うまく使うと「下からのノーマライゼーション」の具現化、となることも、あるミニコミでも書かせて頂いた。また山梨でも微力ながら、そのお手伝いが出来ないか、と動き始めている。来年も、この活動が花開き、山梨からのノーマライゼーションの発信、につながれば、と夢見ていたりもする。

というわけで、この一年は、仕事にも、プライベートにも激動の一年でした。で、来年の目標は、というと・・・、今から露天風呂にでもつかって考えてきます。あ、そうそう、このスルメブログ開設も、今年の大きなニュースの一つ。この数ヶ月、ブログをお読み頂きありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。