悪口と逃避行

 

悪口を書き続けると、妙に盛り上がる時がある。たぶんにタケバタは「底意地」が悪いのだろうが、水曜日はまさにそんな一日だった。この3年間携わってきた研究班の報告書で、僕が担当する部分のお題が「障害者の地域移行と権利擁護」。アメリカやスウェーデンでの調査を踏まえ、あるいは日本の権利擁護機関のフィールドワークを踏まえ、地域移行と権利擁護について日本の課題を迫る、まあそんな内容だ。それまでにウンウン唸りながら、ようやっとアメリカとスウェーデンのことをA4で10枚くらい書き進め、水曜はその両国の特徴を分析した後、「さて、日本では・・・」という段階に来ていた。で、分析を午前中に書いているうちに、冒頭述べた「底意地」の悪さ、が立ち上がってきたのだ。これは、今度出来る「障害者自立支援法」に絡めて書けるんじゃないか、と・・・。

この間、半ば自立支援法「オタク」であるかのように、この法案が出来る前の審議会資料からずっと追っかけてきたタケバタにとって、言いたい事、そりゃあないよなぁ、と思うことがいっぱいあった。特に「地域移行」に限定しても、これも腹立つ、あれはオカシイ・・・というネタはたんまりあった。その一部は勉強会などに呼ばれると吐き出していたのだが、2時間の講演会で全部話せるわけでもなく、きっとグログロたまっていたのだろう。アメリカとスウェーデンの分析で、積極的な平等保障やサービス受給権の問題、あるいは予算上の免責問題や個別支援の問題、などの「切れる」武器(キーワード)が立ち上がってきた。ならば後はバッサバッサと切り込むばかり・・・と好き勝手に「切り」出したのだ。

こういう切り込みほど、痛快なものはない(だから底意地悪いのですが・・)。「こんにゃろー」的な独り言を呟きながらパソコンに向かうこと、延々と12時間。それまで書いた量と同じA4で10枚ほどを、一気呵成に書ききった。きっと求められたお題からとうにはずれて、大方「趣味」の世界に没頭しながらズンズン書き進めたが、こういう「趣味」的分析は、実に楽しい。何かが乗り移ったかのように、「敷地内ホーム問題」と格闘していた・・・。

で、その翌日は、まさに「ふぬけ」状態。昨日どこかから「神さま」が舞い降りてきて、書くエネルギーを使い果たしたのか、いっこうに書けなくなってしまう。この時期恐ろしいことに4本の報告書をこの2ヶ月以内に書ききらねばならない、という危機的状況なのだが、昨日取り組んだテーマは少し、考え不足だったようだ。こういう場合、ある程度無意識でぼんやり考えているうちに、お風呂読書中などに急に何かが「降臨」することもあるので、あまり焦ってはいけない。というわけで、昨日の午後は気分を変えて、来月出かける予定のタイ行きについての事前調べを色々していた。

人間は現金なものだ、とつくづく思うのは、午前中、あれだけやる気をなくして、パソコンを前に魂抜けた状態だったタケバタが、タイのことを思い出すと、急に目が輝き出す始末。そうです、タイのことを考えるだけで、ウキウキしてくるのです。今回も勿論仕事で行くのだが、でもあのまったりとした雰囲気に、屋台の美味しい料理に・・・と考えているだけで、ルンルンになれるのだから、実に単純なるタケバタ。逃避行が出来るのだ、と思うと、その前に報告書終わらさなくっちゃ、というインセンティブまで貰えて、これは本当によろしいことである。今晩から大阪出張なので、日曜は梅田の本屋でタイの本でも買いあさろうかしら・・・、などとテンションがどんどん高まるのであった。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。