“ごとび”モード

 

「今日はごとびやから忙しい」

昔父親に初めてそう聞かされた時、ごとびが何を指すのかわからなかった。
五と十の日を縮めて五(ご)・十(と)・日(び)である。手形決済や納入などの締め切り日が、5と10のつく日が多く、そのためこの日は営業車や商品を運ぶトラックで、街中はごった返す。京都に住んでいた時も、いつもより二割り増しで混んでいるな、と思ったら、案の定ごとびだった。ラジオの交通情報でも「今日はごとびですので・・・」というくらいだから、関西では世間一般に広まった言葉だったのだろう。ちなみにネットで引いてみると、関東でも「ごとおび」と言うそうな。

そう、今日三十日は、ごとびである。で、しかも月末。京都市内なら大渋滞の日。銀行のATMも大混雑する日。大学生の頃は、「何でわざわざ月末の特定の日が混むんだ?分散した方がいいじゃないか」と思っていた。でも、実際に仕事をし始めると、やっぱりどこかで区切りが必要で、その区切りとして「月末」というのは設定されやすい。しかも金曜日だし。そう、でご多分にもれず、僕もこの三十日が一つの山場だったのだ。

五月くらいから、何だか色々な依頼が舞い込みはじめる。あるNPOのニュースの原稿だとか、地元の障害者ネットワークの学習会の講師だとか、福祉施設職員の研修会講師とか・・・。基本的に断る理由がなければ「はいはい」と気楽に受けているうちに、ふと気づいた。「何だか6月末から7月中頃が結構忙しそうだけれど、ちゃんと把握していない可能性が高いぞ!」と。で、手帳情報を元に、パソコンに〆切と内容の一覧表を作る。すると学習会のレジュメも、発表用のパワポも、原稿も、なんだかその多くが6月末までに、なんて答えていたのだ。それに元々書き進めていた論文も、夏休み前になんとかケリをつけたい。そう思うと、げげっ、時間がないぞ、と気づいたのが6月10日。以来、週末も平日も、コリコリゴリゴリ、空いている時間は片っ端からいろんなものを片づけるべく、猛然と取り組んでいた。で、今日三十日は学習会の講師をした後大阪に出張なので、月末〆切のレジュメの自分の中での〆切日だった昨日、ようやっと一山終えたのである。時刻は午後九時。

やったぁ、とテニス帰りの奥さまに大学まで迎えに来て頂いて、帰りコンビニで勝沼醸造の旨い白ワインと黒ビールを買って帰る。今日はふんだんに飲むぞ、と思っていたら、とある編集の方からお電話。話しを聞いているうちに、「こんなことがあるよ」なんてアイデアが浮かび、ならそれも入れて紙面にしよう、とご提案いただく。で、酔った勢いで12時近くまでパソコンに向かって原稿を書く私。なんぼなんでも、ちょっとエネルギー切れ、でございます。何だか意識がとぎれ、日付が変わるころには朦朧として、おやすみなさい。今朝、読み返してみると、アウトラインはそれでも書いているんだから、よっぽどこのごとびモードはオン状態だったんだろうね。

とはいえ、来週の月曜日にも、もう一山大変な仕事があり、来週末までごとびモードが続く日々。なんだか暑くなって身体もだるいし、体調管理だけはしないと、大変そうであります。六月は、そういう意味で、よう働いたなぁ・・・。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。