メールデータが消える

 

個人アドレスではなく、大学アドレスのデータが消えてしまった。

研究室に二台あるパソコンのデータを入れ替えている最中に、なぜだか消えてしまった。元々使っているパソコンのデータを、共有フォルダに移し、それを移したい相手先のパソコンにコピーした、はずだったのだが、なぜだかこの単純作業の合間に、データをきちんと移行出来ず、しかももとのパソコンからもすっかりなくなってしまう、という大失態。不幸中の幸いは、マイドキュメントは無事に移せて、あくまでメールデータだけが消えてしまった、ということ。たった1年半ではあるが、そのメールの大半が消えたことは、軽い喪失感、である。

とはいえ、ぼやぼやしてられない。とにかくサーバー上に残っている、6月以後のデータを救い出す。わずか3ヶ月で1100通。なんということだろう。なんでこんな膨大なメールのやり取りをしているのだろう。しかも、大学だけでなく、niftyのメールだって、倍以上の送受信をしている。そこで単純に3倍にしても、3ヶ月で3300通。一月1100通。一日40通弱。まあ、これが普通なのかも知れないし、僕なんて少ない方なのかも知れない。当然この中には、迷惑メールやら(最近大学アドレス宛に出会い系エッチメールが多くて、大変困っている)、広告メール、どうでもいいメールもあるだろう。でも、それが3分の2としても、一日10通以上、色々なやりとり、返信が必要なメールがあるのだ。なんだか、メールの進化は便利なのか、仕事を増やすだけなのか、考えこんでしまう。

なので、データが消えたことも、実はサッパリしている自分がいたりして、驚く。まあ、必要な人ならば、またメールくれるでしょう、と。

そう、そうやって、割り切ってメールと付き合っていかないと、どんどん返信スパイラルの中に陥っていくのだ。そうすると、いつまでたっても、目の前の仕事を片づけるだけで、本当にしたい仕事、やりたい課題に辿りつけない。でも、世の中には、こんな愚図の僕とは全然違うレベルで仕事をしておられる方もいる。例えば恩師のお一人は、そういえば一日に100通くらいメールはくるけど、僕が出したメールには素早く返信をくださっていた。博論の指導をして頂いた時など、夜中2時に送って、2時半に返事が来た時は、もうただただ脱帽、であった。そういうレスポンスの早さだけでなく、きっちりと社会的なお仕事もされている、そのタフさとクオリティーの高さは本当に見習いたいけれど、まだまだキャパシティーの狭い僕には到底たどり着けない高い壁だ。いやはや、こんなブログなど書いている暇はないのだけれど、とついつい愚痴モードになりそうだ・・・。

今日は研究室にお客さんが多かった。学生だけでなく、パソコンのデータ移し替えに電算機センターのSさんにご尽力頂く。そう、こういうサポートがあるからこそ、移し替えて頂いている間に、学生対応やら別の仕事が出来ているのである。本当に大学の職員の方々の支援の数々には、頭が下がりっぱなしだ。以前別のNPOでパソコンのデータ入れ替えやデータ共有のことをやっていたとき、一人で丸一日、パソコンの前につきっきりだったのに、今日、1時間くらいでさくっとやって頂きたい内容を終えて頂いた。こういう縁の下の力持ち、はどれだけ大切で大事な仕事なのか、を以前は縁の下でほんのちょっぴり体験してきた僕は、しみじみ感じる。故に、Sさんにどれだけお礼を言っても言い尽くせない。Sさんにパソコンを託せたおかげで、今日は入れ替わりやってくる二年生のゼミ生達と格闘がじっくりできた。

そう、二年生のゼミ生は今年も学生チャレンジ制度の支援をいただき、19名で「知的障害者を犯罪から守る」というタイトルでアンケートやインタビューを行っている。前期は皆さんもう一つイメージがつかめず、夏休みもサボってしまった人もいて、盛り上がりに欠けたが、後期になって、いよいよ後がなくなり、火がついてきた。各班毎に課題を設定し、場合によっては班を組み直す中で、各人が自分事としてこのプロジェクトに関わり始めてくださっている。ゼミを、いかに自発的に学生達が学び成長出来る「場」へと高めていけるか。そこに、場の設定役である教員がどうコミット出来るか。これが去年からの僕の課題だったのだが、今年も後期になって、ようやく場が成熟し始めたようだ。

学生達に、一つ一つの目の前の課題に、苦労しながら乗り越えてもらうプロセス。もちろんアウトプットもよりよいものに仕上げていくよう努力してもらうが、このプロセスの中にも、大きな学びが隠されていると感じている。そう、データが消えても頭に残る大切な経験や智慧。それこそ、学生にとっての糧、なのだ。データといえば、メールデータが消えても、僕の頭の中に残っている経験や智慧って何だろう、この文章を書きながら、そんなことを考えていた。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。