ミッションとポジション

 

前回、甲府で微弱な揺れがあったことについて書いたが、先週末にはご案内の通り、中越で大震災が起こる。仕事場からの帰りのラジオで、「渋滞が発生し、乾パン以外の食料が届けられていない避難所がいくつも存在する」という報道に接すると、胸が痛む。学生時代であれば時間があったので、何かお役に立てれば、と現場に駆けつける事が可能だった。今は予定がタイトに入っているので、義捐金など別のやり方を考えなければ、と思う。

現場に駆けつける、と言えば、もう10年近く前、トルコでおそった大震災(トルコ中西部地震)の後、被災地KOBEから義捐金と復興に向けた経験を伝えよう、という想いの詰まった救援チームが結成された。専門性も何も持たない大学院生だった私も、ひょんな契機からこのチームに参加する事となる。「自分なんかが行っては邪魔になるのでは」という思いで一杯だったのだが、チームの一員になってしまった以上、現地到着後、とにかく自分にも出来ることを、と必死になって探し、チームの活動記録の作成や日本へのレポート送信などの後方支援活動のお手伝いをしていた。当時は「何かお役に立ちたい」という強い思いと、「でも僕なんかが行っても足手まといになるのでは」という無力感に引き裂かれ、とにかくしんどい想いだった。

しかし、今になって思うと、マスコミ報道などの断片的なこと以外、日本ではあまり知られていなかった被災地の現状を伝える、という仕事にも、一定の役割はあった、と思う。その昔、ボーイスカウトで緑化募金などをやっていても、義捐金がどう使われるか、について集める当の本人が理解していなかった。そういう「寄付金の宛先」についてディスクロージャーする役目が、現地での活動を報告する、という役割にもあった。「兵站」「ロジスティック」なんて言葉は当時は全く知らなかったが、そういう「縁の下の力持ち」の仕事をあの当時はしていたのである。

ただこれも、その後いくつもの国際会議などに参加して、ロジスティック担当(=ロジ担)の方々の活躍ぶりを垣間見て、その仕事の重要さを理解して、今にしてようやく「ああ、トルコでは僕もロジ担だったんだねぇ」と整理できた。ところが視野狭窄の当時、そういう「後方支援」の本質を理解していなかった私は、前方支援に立てない自分の無力さ・歯痒さで一杯いっぱいになっていたのだから、本当に情けない限り。「自分が」何かをする、という「自分」意識が前に出るが故の問題なのだ。被災地のためにチーム全体がうまく機能することが第一のミッションならば、専門性を持たない自分のポジションで何が出来るか、という全体像の中での自分の位置づけを考え、出来る範囲の最大限の仕事をすればいい、というクールさが足りなかった。使い古された言葉だが、cool headなきwarm heartの限界を、今改めて感じる。

話は変わるが、このcool headwarm heartは、先週末に開かれたシンポジウムの壇上でも聞いていた言葉だった。長野における障害者の地域支援体制を作り上げてきた第一人者のお一人、福岡寿さんを迎えてのシンポジウムで、福岡さんの口から、長野ではどう地域作りを「仕込む」か、についてcool headwarm heartを持って次々と手を打ってきた、という話を伺う。

2年前の自立支援法制定時に既に、「これからは市町村が主役だから」と、私が今やっている全市町村周りも既に終えておられた福岡さん。各地域の底上げをするなかで、もちろん前提としてwarm hearを持ちながら、地域の資源をどううまく活かして地域支援というミッションを育んでいくか、をcool headで分析した上での行動であることが、福岡さんの講演の端々にほとばしっていた。私自身、山梨でお手伝いをする立場にいて、福岡さんほどの視野の広さを持ててはいないが、せめて10年前の頃よりは「全体像」を意識したいものだ。間違っても「自分が」なんて囚われに陥ることなく、「山梨の豊かな地域支援作りというミッションを実現するために、私のポジションで何が出来るのか」というチームの一員としての意識を持ち続けたい。

そう、どんなポジションであれ、ミッションという全体像を忘れないポジショニングを意識化・内面化できれば、過たずに真っ当な行動が出来る。トルコと長野の話をつなげていくと、こういう整理が見えてきた。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 山梨学院大学法学部政治行政学科教員。現場(福祉、行政、学生)を掻き回す、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 真面目な紹介は下記参照。 http://www.ygu.ac.jp/profile/h-takebata.html 「読めば読むほど味の出る!?伝言板」として始めたこのブログ、最近は割と長めのエッセイを書き散らしています。 日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればh-takebataあっとまーくygu.ac.jpへ。