単なる宣伝を超えて!?

 

昨日今日とオープンキャンパス。未来の学生さん達に出逢える大切な機会である。

昨日一緒のブースで対応した同僚と、「自分たちの時代にはオープンキャンパスなんて無かったよね」と話す。赤本や合格体験記、大学の入試案内パンフレットといったごく限られた情報で、4年間という大切な期間の所属先を決めるのだから、よく考えたらバクチ的要素があった。まあ、僕自身は、たまたま合格体験記に書かれていた「変人科」という名前に引かれて、人間科学部の門を叩く、という、相当リスキーな選択肢をしたのだが、結果的に今、大学の教員になれているのも、その選択肢が間違っていなかった、のだろう(多分)。

今の受験生は、大学に来て、教員や在校生と話したりするなかで、その雰囲気を感じることが出来る。どこの大学だって、学生囲い込みの側面がこのオープンキャンパスにあることは否定出来ないが、でも、その現場に行き、そこにいる人々のお顔をみて、雰囲気を感じると、宣伝している内容以外の、言外の何か、が感じ取れるはずだ。今日来て下さる方々も、そこでこの大学に対するよい雰囲気を感じ取ってくれたらよいのだが

さて、バタバタしているうちに、告知をし忘れた、大切な情報を二つ、ご紹介しておきます。

一つ目が、山梨県障害者自立支援協議会の平成20年度報告書がようやくネットでアップされました。
http://www.pref.yamanashi.jp/shogai-fks/jiritsushien-kyougikai.html

昨年2月からスタートさせ、市町村に権限が委譲された時代にあって、県単位で出来る「広域的・専門的支援」とは何か? 当事者主体や権利擁護支援を本当に官民協働で議論出来るのか? 形式的会議で終わらせないために、どうすればいいのか? そういった課題や宿題が山積し、昨年1年間、やりながら、悩みながら続けてきた同協議会の報告書。通常の審議会や協議会より、泥臭い記述が多いかも知れないけれど、その分、現場のリアリティに基づく何か、が記載されているのではないか、とちょっぴり自負している。

もちろんこれは通過点であり、来月8月10日に開かれる、県内全ての地域自立支援協議会と山梨県障害者自立支援協議会の「合同協議会」で、この内容も報告し、併せて地域の側からも提言を受け、一つでも二つでも、実際の課題に取り組んで、成果を上げていくための土台が出来ただけである。でも、プロセスとしての中間報告を出しておくことの大切さを、玉木さんが座長を務める西宮市から多く学んだ。市町村ほどダイレクトに課題に接していない分、少しパンチは弱いかも知れないけれど、ご笑覧くださいませ。ちなみに、泥臭さで言えば遙かに泥臭い内容として、私と今井志朗さんという二人の特別アドバイザーの二年間の活動報告も、ついております。こちらは、二年間の学びをまとめた、「宿題」提出のような気分で書きました。

で、書き物について、大切なもう一つの御報告が。次の本が出来ました。

「障害者総合福祉サービス法の展望」
茨木尚子・大熊由紀子・尾上浩二・北野誠一・竹端寛 編著
出版社名:(株)ミネルヴァ書房、発行年月日:20097
ISBN
コード:978-4-623-05519-7
ページ/サイズ:
368p/A5
販売価格:3,150円(税込)

自画自賛ではありますが、良い本になっております。リンク先のDPIHPに目次も記載されていますが、90年代以後の20年間の障害者福祉政策の激変を振り返り、自立支援法以後、すっかり忘れ去られてしまった観のある地域生活支援のうねりや、社会福祉基礎構造改革、支援費に到る経緯やその背景分析などが、ちゃんとなされています。また、介護保険との関係についても、相当突っ込んだ議論をした上で、第三部で自立支援法を批判するだけでなく、では何が必要なのか、の対案を示すべく、努力してきました。ここ数年、DPIの研究会でずっと議論してきた内容をまとめた成果でもあります。僕は個人的に、障害者福祉の分野での、今や古典的名著とも言える「自立生活の思想と展望」(定藤・岡本・北野編、ミネルヴァ書房)の続編とも感じているのですが

3000円を超える、とは高い本になってしまいましたが、その価値は十分にある、はず。なので、良かったら、お手にとってくださいませ

と、うだうだ書いているうちに、今日の大切な宣伝ミッションである、オープンキャンパスの打合せの時間であった。では、この辺で。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。