ツアーを終えて

 

今日はスーパーあずさのひと、である。しかも、久しぶりに塩尻からの最終便、である。この週末もツアーに出かけていた。なかなかハードなツアーであった。

昨年度から関わっている三重県の相談支援体制整備・強化のお手伝いの仕事の一環で、今年は鳥羽市の自立支援協議会立ち上げのお手伝いにも関わらせて頂いている。関東の人は鳥羽と言ってもピンと来ない人もいるようで、木曜の飲み会でも???という表情の方もおられたが、関西人にとって伊勢・鳥羽・志摩といえば、南紀白浜と共に、海水浴にバカンスに、と憧れの地。まさか観光地に仕事で関わるとは思ってもいなかった。そして、関わってみると、いろいろな問題がわかってくる。数多い離島への支援問題、既存の社会資源の少なさ、支援体制の脆弱さ。だが、これらの難点を跳ね返そうとする勢いが、金曜の自立支援協議会準備会の議論でも散見された。そういう息吹を、システムに、制度化にどうつなげていけるのか、ここしばらく月刊鳥羽、となりそうだが、実に楽しみだ。ちなみに、打ち上げ時に頂く刺身も勿論格別である。

さて、オモロイ現場で関わらせて頂くのはありがたいが、大変なのが移動。その日は鳥羽市のアドバイザーを務めている、恩師のK先生とご一緒するので現地で打ち合わせが必要だったのだが、集合時間が正午。で、山梨から朝一番の「かいじ」「ふじかわ」に乗っても、その時間にたどり着けない。そこで、木曜の飲み会は中座して、最終の「スーパーあずさ」で八王子新横浜まで出かけ、前泊! 津や大阪なら5時間の移動で、鳥羽ならさらにプラス1時間の6時間。津なら朝一番でも間に合うのだが、たかが1時間、されど1時間、を実感した。

そして、土曜日は藤井寺まで帰るK先生と大和八木まで近鉄特急でご一緒し、僕はそのまま京都まで。月曜午後に梅田でワークショップの打ち合わせが元々予定に入っていたので、週末は久しぶりに実家に滞在する。そして、3月以来関西にご縁がなかったので、あれやこれやを土、日、月の午前とぶち込んでいく。土曜のお昼は京都駅で研究者の友人Sくんと議論をした後、梅田に場所を変えて、「大阪のお母さま」と再開。9月の仕事の打ち合わせもそこそこに、現場の課題についてあれやこれやと議論をしている内にあっという間に3時間。その後は友人Eくんの新居+愛娘へのご挨拶に逆瀬川(宝塚)まで北上する予定でいたので、汗をかきかき、阪急梅田駅から電車に飛び乗る。

日曜午前は友人Nくんと某所訪問の後、京都駅の近鉄名店街の「鳥八」で昼酒をあおる。日曜は朝から照りつける日差しにやられていたので、ビールが死ぬほどうまい。で、その後、梅田で別件の打ち合わせをした後、いつものコスパで久しぶりに店長と団らんしながらワインを15本!(自宅に送る12本+実家に持って帰る3本)を頼み、その後は甲子園口で散髪。ここしばらく関西に来れなかったので、山梨で仕方なく髪切り屋に6月、入ったのだが、これが大失敗。某理容日本一を名乗る店なのだが、まあ流れ作業で雑に刈るし、美容室と違って顔剃りしてくれるのはよいが、クリームをケチった為、あごは血だらけ。中に入って床屋の台座に座った瞬間、その失敗が予感されたのだが、もう手遅れ。つくづく馴染みのヤマツタさんにこれほど感謝したことはなかった。その後悔の念も、きちんと日曜日に告白し、安心して切ってもらう。たかが散髪、されど散髪、である。

で、今日午前中は大阪府内の障害者支援施設を訪問。そこでの職員研修についてお手伝いして欲しいと言われ、現状についてお話を伺う。何だか最近、あちこちで研修の仕事をさせて頂いていて、自分の研究課題にもこの職員エンパワメントが1項目として加わっているのだが、これも「成り行き」といえば成り行きだし、自然の結論とも言える。以前から、福祉施設において、当事者への支援に本気になっている人が、一方で同じ施設の同僚支援者への目線が必要以上に厳しいことが気になっていた。支援を職人芸に高めている支援者ほど、一方で職人同士の評価が厳しいだけでなく、「技術は盗んで覚えよ」といった徒弟制度的手法で居るような気がしてならなかった。当事者だけでなく、支援者もエンパワメントされないと良い支援は出来ないはずなのだが、その部分が個人の資質の問題に矮小化されているような気がしていたのだ。障害の社会モデルの観点に立てば、支援者の支援内容や力量だって、支援施設の組織論や研修体系によって社会的に構築される(放置される)側面も少なくないと言うのに

そんな思いを、支援現場で15年以上突っ走って来られたAさんと共有出来たのは、僕にとっても大きな収穫だった。そして、「どうせならワクワクする研修をしたい」という思いも。最近このブログでも書いているが、人は「説得ではなく納得」でしか動かない。その際、ダメだダメだと非難や批判をされて、それで納得するのは、よほどお利口さんかマゾ的な嗜好性のある人でないと、続かない。だからといって、安直な「ほめて育てる」と同化するつもりもないが、でも、批判や非難だけでなく、建設的でポジティブな提案に基づく何かがあった方が、多くの人の納得を導きやすい。そう思っていたので、「おもろい研修をしよう」という提案がすっと相手に伝わり、僕もワクワクしてきた。そう、夢と希望がないと、ね。

で、るんるん気分で梅田に場所を移し、午後1時からの別件の打ち合わせから逆算すると、15分しか余裕はなかったのだが、紀伊国屋書店の梅田店に一応寄ってみる。最近あまりご縁がなかったのだが、るんるん気分が同調してか、15分で6冊ほどの本をゲット。気分が良いとこんな事もあるのである。さっさと大学宛に郵送手続きも済ませ、4時まで侃々諤々の議論をした後、新大阪まで急いで戻り、パートナーがご所望の551のシュウマイと餃子もゲット出来て、名古屋までの「のぞみ」では熟睡。次の「しなの」で〆切間近の原稿と格闘して、振り子電車特有の揺れに気持ち悪くなりながら、何とか原案を仕上げて、スーパーあずさの人になった。しかも、これは木曜の夜に乗った同じ列車なのである。

まる4日、よう頑張った。でも、明日も朝からみっちり仕事。今宵、僕より先についているはずのコスパのワインで旅の疲れを取って、早く寝ることにしよう。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。