現場から変える福祉政策

「福祉政策を変えるためのノウハウをまとめた、わかりやすい新書がほしい」

そう言われて、その気になっている僕がいる。

日曜は津に前入りし、三重県が主催する「市町障害福祉計画研修」の担当チームの皆さんと事前打ち合わせ+飲み会、だった。その飲み会の際、県の担当者のお一人から、「先生が自治体支援を通じて実践されてきたことを、わかりやすい新書のような形で書いてほしい」と言われた。
 
月曜日は朝から夕方まで、1日研修+今後の展開に関する戦略会議。みっちり現場支援に携わった後、4時間半かけて津から甲府に帰る列車内で、ふと考えてみた。言われてみれば、30代って、ずっと自治体福祉政策を底上げする仕事に携わってきたな、と。山梨県と三重県では、障害者福祉のアドバイザーとして7年以上コミットし、山梨県ではここ3年は地域包括ケアシステムの展開のお手伝いもしている。その際、ずっと大切にしてきたのは、「厚労省の指示待ち状態」を超え、現場からのボトムアップ型の政策形成、だった。タイトルを付けるなら、「現場から変える福祉政策」。地味かもしれないけれど、こういうタイトルで、地域福祉の現場でどのような変化が起こっているのか、地方自治体レベルでの福祉的支援の現場で起こっいる課題を乗り越えるために、どのようなツールを使って、どう変えて行けば良いのか、を障害者・高齢者福祉政策に関して、整理して言えそうな気になっている。
とは言っても、出版社からのオファーを受けた訳ではない。新書を出している出版社に、つてがあるわけではない。ただ、運が良ければつながったら、という淡い期待で、どんな本が書けそうなのか、章立てを考えてみた。
序章 上意下達・中央集権型福祉の限界
→序章で書くとすれば、標準化・規格化された福祉政策の限界、だろうか。介護保険法や障害者総合支援法は、全国一律の最低限度の量と質を定めた内容。でも、それが「最低限」の保障しか出来ていないがゆえに、歪みや限界があちこちに生じている。介護保険の要支援・要介護1の切り捨て、あるいは障害者の長時間介護保障が国基準とならない、ということなど、大きな矛盾がある。それに加えて、施設福祉中心の限界もあり、地域自立生活支援への転換が求められている。少子高齢化の中で、当事者主体を貫きながら、持続可能な福祉制度を作るには、現場からの創意工夫が必要不可欠だ。
1章 手作りの福祉計画
→現場から創り上げる手作りの地域福祉の実践例としては、僕がアドバイザーとして関わっている某市の事例を取り上げてみると面白いと思う。児童・高齢・障害・貧困の縦割り福祉を超え、福祉総合相談窓口を作り、そこでの困難事例の検討の中から、地域課題を発見し、それを地域福祉計画という行政計画に乗せて、ミクロの個別課題をマクロの福祉政策へと転換するプロセスを歩みつつある某市。ここでの、行政・包括・社協・地域住民の協働プロセスを描いていくと、「現場から変える」のダイナミズムが描けそうだ。
2章 自治体現場をサポートする
→市町村の福祉行政は、何とかよりよい仕事をしたい、と思う。でも、いかんせん、人減らしと業務過多の反比例の中で、国が求める仕事をこなすだけでも精一杯で、最低限度以上のことや、況んや新規事業にまで中々手が付けられない。そんな実態を超える為にこそ、都道府県の広域的・専門的支援が必要不可欠だ。昨今、都道府県の不要論とか道州制とか言われているけれど、本気で都道府県が地域支援に向き合えば、自治体が地方分権における自由裁量を活かした自治体独自政策を生み出す支援が出来る。そのサポートをしてきた山梨県の相談支援体制の整備支援、三重県での障害福祉行政に関わる市町職員エンパワメント研修、そして山梨の地域包括ケアシステム構築支援の体験から、国と市町村の間に立つ都道府県の福祉政策の「あり得る(けどあまり実践されていない)可能性」を検討する。
3章 NPOからのボトムアップ型政策提言
→現場から変える福祉政策、というのは、何も自治体行政で完結する話ではない。自治体が把握していない現場の政策課題について、NPOが水先案内人として施策化を主導することもできる。NPO大阪精神医療人権センターが行っていた大阪府の精神科病院訪問活動を「精神医療オンブズマン制度」という形で政策化したことは、NPOから自治体への、ボトムアップ型の政策提言の成功事例の一つ、といえる。この取り組みの可能性と限界を通じて、官民協働の可能性や限界を考える。(これは『権利擁護が支援を変える』に入れた論文のエッセンスをまとめる形)
4章 国の政策だってボトムアップで
→民主党政権時代に僕も委員として関わった、内閣府の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会は、国の法律の対案を、当事者や事業者、自治体などの現場レベルの委員が集まって議論・整理しまとめ上げた画期的な提言である。だが、上意下達・中央集権型福祉の厚労省はどうしても受け入れることが出来ず、自民党政権への政権交代が濃厚になった為、完全にその内容をネグレクトし、実現には至らなかった。だが、この内容には、ボトムアップ型の政策形成が、国の政策でも不可能ではない、ということの萌芽が示されている。この部会のプロセスを振り返り、ボトムアップ型の福祉政策の可能性について検討する。
こんなラインナップを新書でいかがでしょう?
ご興味のある出版社さま、ホームページに記載されているメルアドで、ご連絡くださいませ。
なんて書いて、そんなに都合良くオファーなんて本当に来るのだろうか・・・

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 山梨学院大学法学部政治行政学科教員。現場(福祉、行政、学生)を掻き回す、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 真面目な紹介は下記参照。 http://www.ygu.ac.jp/profile/h-takebata.html 「読めば読むほど味の出る!?伝言板」として始めたこのブログ、最近は割と長めのエッセイを書き散らしています。 日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればh-takebataあっとまーくygu.ac.jpへ。