誰のための、何のための地域福祉?

最近、地域福祉の専門家、とラベルを貼られることもあるし、確かに地域包括ケアシステムに関する編著や文章も書いているので、少し気になることを書いておく。
僕が結果的にラッキーだったこと。それは、地域福祉に関わる前から、精神病院や入所施設の構造的問題と向き合い、「脱施設化」というテーマと向き合っていたこと。「地域で暮らしてはいけない」、と、社会的に排除されている人をどう再び地域に包摂するか。その方法論として、地域福祉と出会ったこと。この順番が、決定的に大切だと、今ならわかる。
「迷惑をかけるから、地域から出て行ってくれ」「親が面倒を見れないなら、精神病院や入所施設しか行き場がない」と第三者に決めつけられ、地域生活から排除され、日本も批准した障害者権利条約19条が差別だと指摘する「特定の生活様式を義務づけられている」状態に長い間おかれている人。それが、社会的入院・入所の根本的問題である。今年の夏に起こった相模原での連続殺傷事件でも、そもそも入所施設に障害者を分ける思想そのものが、排除の論理であり、そこから差別が起こった、と僕自身は考えている。(この点は以前、ブログにも書いた)。
つまりは地域社会から排除されてきた人が、どう地域の中で自分らしく生きることが出来るか、をずっと考えてきた。歴史的に辿れば脱施設化とはコミュニティケアへの転換であり、地域の中で障害が重くても、認知症でも、ターミナルの時期でも、暮らし続けられるし、それを支え続ける、というのが施設や精神病院、家族介護者に依存しない地域支援のあり方として模索されてきた。だからこそ、地域福祉で出てくる「困難事例」って、「本人の困難」、ではなく、「その地域や支援者にとっての困難」であり、変わるべきは本人ではなくて地域だ、と思い続けてきた。
でも最近、地域福祉領域で現場と関わったり研修をする中で、どうやら上記の前提が共有されていない、ということに気づき始めた。地域福祉に関わる専門家といわれる人の中にも、「認知症でBPSDが出てきたら、精神病院に入れるしかない」「特別支援学校の卒業後は、みんなと一緒に暮らす入所施設の方がよいのではないか」という発言をする人と、いまだに出会う。僕としては、脱施設化が世界の潮流なのに、どうして「何をいまさら!」なのだが、いまだに!そういう発言に出会うのである。
「○○ならば、施設・病院しかない」という論理の、何が問題なのか。それは、「地域に迷惑をかけない人は地域福祉が支えるけど、地域に迷惑をかける人は入所施設や精神病院へ」、という選別のロジックに、他ならぬ地域福祉に関わりがある人でも染まっていることである。脱施設化、という前提がないと、こういう選別の論理が跋扈する。だが、これは地域福祉にとっては、本末転倒である。
なんのための地域作りであり、誰のための地域福祉か。それは、介護給付費の削減のためでも、ボランティアという「安上がり労働力」の確保のためでもない。どんなに重い障害を持っても、BPSDや強度行動障害、幻聴や妄想などの形で生きる苦悩が最大化していても、地域から排除されない。誰もが地域住民として尊重される。そんな地域を創り上げるために、専門職や行政、地域住民がどのように学び合い、関われるか。地域作りとか地域福祉と言われるものは、この学び合いや関わり合いの中から生まれる相互作用を生み出すプロセスなのだと思う。そして、僕自身は、そういうスタンスで地域作りをしてきた、精神科ソーシャルワーカーから沢山のことを学び、結果的に地域福祉のダイナミズムを学んできた。(「五つのステップ」という学恩
そして、社協も民生委員も地域福祉も、そういう大きなビジョンのための方法論なのだ。方法論は、ビジョンの達成のために、柔軟に変わるべきである。方法論が絶対化や固定化し、自己目的化されてはならない、と、改めて感じる。
そう考えると、社協や民生委員の活動の中には、誰のため、何のため、が見えにくく、方法論が自己目的化してしまった活動が、あるのではないだろうか? 地域包括支援センターや基幹型障害者相談支援センターが、「○○ならば、施設・病院しかない」という選別や排除の論理に手を染めてはいないだろうか? 誰のための、何のための、地域福祉なのか? 今一度、原点に戻って問い直さねばならないと、僕は感じている。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 山梨学院大学法学部政治行政学科教員。現場(福祉、行政、学生)を掻き回す、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 真面目な紹介は下記参照。 http://www.ygu.ac.jp/profile/h-takebata.html 「読めば読むほど味の出る!?伝言板」として始めたこのブログ、最近は割と長めのエッセイを書き散らしています。 日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればh-takebataあっとまーくygu.ac.jpへ。