素麺、パンゴリン、そしてえにし

今日は久々のまったりとした休日。午前中、昨日、大阪出張のついでによった贔屓の酒屋で仕入れたワイン12本が届く。山梨はワインの産地でもあるのだけれど、自分の舌に合うワインを、しかも1本1000円程度で、というと、なかなか定番にたどり着けずにいる。でも、この贔屓の酒屋さんの店長Mさんは、ほぼ確実に、ドンぴしゃに美味しくコストパフォーマンスばっちりのワインを勧めてくれる。というか、単に彼も僕も飲んべえで、たまたま彼と僕の好みが似ているだけかもしれないけれど。でも、2,3年前からの知り合いで、山梨に引っ越した後も、必ず時間を見つけて色んな種類のワインを合計12本、買ってしまう。理由は簡単、12本(一ダース分)買えば送料が無料だからだ。

で、Mさんのお店でワインを買うのが楽しいのは、味が良いから、だけではない。半分はMさんとのやり取りに惹かれて、もある。お互い同じ年代のMさんと僕は、そこではワインの話しかしない。しかも、僕は未だにブドウの種類も産地の違いも、ようわからんビギナーである。でも、ワインをこよなく愛しているMさんの説明を聞いていると、何だかもう既にワインを飲んでいるような、少しほろ酔いの気分になれるのだ。前回買っておいしかったワインの話を枕に、この1ヶ月に入ってきたお勧めのワイン、インポーターやボジョレーヌーボーの話、ブドウの品種と味の相関関係・・・。やりとりをしながら、自分がすっかりワインの園奥深くに入っていることを楽しみながら、さて今回はどんなワインと対面出来るか、と思うとワクワクする瞬間なのだ。で、確か3万円だか5万円だか買うと、2000円キャッシュバックしてくれ、しかもこの日は10パーセント引きセール中だったので、某百貨店なら5000円もするワインを含めて12本で合計1万2000円なり。一本あたり1000円。ほんと、安くていい仕事、してはります。ちなみに、このお店の名前も、そのものズバリ、「コスパ!」といいます(http://www.cospa.jp/)。Mさんは高槻店の店長さんです。ワイン好きな人は、是非立ち寄って見てくださいませ。

で、お昼は、これもお取り寄せの素麺、「島の光」を堪能する。これはスウェーデン在住時に、陣中見舞いに来られたEさんから頂いたもの。この素麺を食べていらい、少なくとも100円ショップで売っている素麺は食べられなくなった。本気の素麺の奥深さ、を堪能させられた。Eさんは現在関東にお住まいなのだが、ご実家が四国で、実家から必ず毎年送られてくるそうな。四国はうどんといい、素麺といい、どうして麺類がこうもしっかりしているのか。根性の入り方の違い、に今日も脱帽させられながら、生姜ときざみノリ、だし巻きにおネギさんを添えて、腹一杯いだだく。休日なので、Mさんお勧めのリンゴのシードルを飲みながら頂くと、どっちも最高に美味しい。こういうぐーたらは、何とも格別である。日本のジュースのようなシードルとは違い、大人の淡い苦みが炭酸と絶妙に合うシードルは、生姜を絡めて食べる素麺の為に生まれてきたのか、とすら思ってしまう。

お昼以後は、田口ランディの「ハーモニーの幸せ」を読みながらの午睡。実は以前ハードカバーで読んだときには全然ピンとこず、途中で放棄して、挙げ句の果てに妻がブックオフに出してしまったのだが、お昼前に出かけたイトーヨーカドーの本屋で偶然遭遇。なぜか惹かれてまた買ってしまう。本ってほんとに面白いなぁ、と思うのは、2年前くらいに全然面白くなかった本が、今回はすっごく面白く感じてしまうこと。きっと感受性のレセプターの方向性が日々変わっていて、たまたま現在の位相に彼女のメッセージ性の在り方が見事にはまったんだろうな。うたた寝を挟みながらも、夕方までには読み終えてしまう。彼女の辿る心象風景にシンクロさせながら、彼女が書かずにいられない業の深さに思いを馳せる。書くことが癒しになる、とは彼女のような人にピッタリなんだろうなぁ。では、僕は何のために、こんなにブログに書き付けているのか。彼女ほど背負っている業も深くない僕が・・・。たまゆらに考えるけれど、月並みな理由以外に出てこない。あんまり簡単な答えに依存せずに、ぼんやり考え続けた方がいいのかな、とも思っている。

夜は、早速届けられたワインの中から南アフリカのシラーという種類のブドウを使った「パンゴリン」というワインを頂く。ほんと、1000円でお釣りが来るこのワイン。夏場などちょっと冷やさないとくどすぎるくらい、こゆい。でも、うまい。今日はお世話になっている先生から頂いたインゲンとトマトを鳥の胸肉と煮込んだ「イタリアのマンマ風煮込み料理」を妻がつくってくれたのだが、まあそれによく合う。ペロッと平らげ、ゴクゴク飲んでいるうちに、一本がか~るく空いてしまう。これほどの至福はない。昼も夜もよく飲んでます。すんません。でも、気持ち良いのです。

で、少しほろ酔いの気分でパソコンに向かいながら、今日の一日を整理する。いろんなご縁があって我が家に集まった様々な食材のコラボレーションのおかげで、気持ちもおなかも満たされた一日であった。食べたり飲んだりすることを通じて、いろいろな人とのつながりが再認識された一日。ついでに言うと、田口さんの本の編集をしているのが、大学時代の友人だったりする。ほんと、つながりが生み出す拡がり、に支えられて生きている事に感謝の一日。そういえば今、酔っぱらいながら読んでいるのは「はじめたばかりの浄土真宗」。ついでに僕がもとより惹かれているのが、母校の高校のあった東寺をつくった空海。まさに、仏縁、ほどではないけれど、「えにし」を色々感じている。縁と言えば、本当にお世話になりっぱなしの指導教官が主催されていたのは「えにしの会」だっけ。拡散しがちな酔っぱらいの思考の中でも、「お顔の見える関係の拡がり」の豊かさが自分にとってどれだけかけがえのないものか、と再認識させられた7月の終わりの日であった。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。