3泊4日1600キロ

 

このお盆の帰省ラッシュのど真ん中、標題にあるように、その渦中に飛び込んでしまった。

まあそれも仕方ない。この月曜日に5年ぶりに、母方の親戚一同が集うことになったのだ。前回の集いでは、私とパートナーの結婚を祝って集まってくださり、今回は別の親戚の結婚披露の会なので、何が何でも行かなければ。86歳になる祖母にも逢いたいし、お墓参りもしておかないと。

でも、何せ場所が島根県の山奥。甲府から広島まで新幹線でも飛行機でも6時間、そこから高速バスで1時間ちょっと揺られていくので、乗り換え時間も含めれば、計8時間半くらいかかるだろうか。鉄道なら一人往復5万円弱かかる。二人で10万円、というと、結構!な出費。ならば車で、と調べてみると、高速道路料金は往復で3万円。1600キロなので、50リッター入るアクセラ号なら、ガソリンを3回満タンにすればいけそうだ。これで大体2万円。すると、半額の魅力はやはり大きくて、車で出かけることにした。それに、「通常所要時間は9時間半」って書いてあったし。さて、実際は・・・

ご案内のように、皆さん同じ事を考えるから、「帰省ラッシュ」なるものが発生する。で、回避ができないのなら最小化したい、というのも、誰でも思いつく話。関ヶ原や滋賀県内の超渋滞ポイントを回避できないのなら、せめてそこを通るのを夜にしよう、と浅知恵で考える。よって、土曜の夜7時に甲府を出て、行きは関ヶ原から栗東まで地道で回避すると、なんとか6時間で実家の京都までたどり着く。偶然にも京都は甲府からも島根からも400キロ、という「中間地点」なので、そこでしっかり寝て、英気を養って、日曜日は松江まで出かける。ただ移動だけではつまらないので、魚料理と出雲大社への観光、という最低限の楽しみを設定したのだ。当然中国道の渋滞ポイントも、元京都人としては裏道を駆使して回避する。ここまでは、すごく浅知恵が大当たり、だった。

おかげで6時間ほどかけて、日曜日の夕方には京都から松江に到着。年間で一番宿が繁盛する時期なのに、1週間前までホテル予約も忘れていたので、当然殆どどこも空いていない。かろうじてネットで押さえられた宿は、二人で7000円。全く期待してはいなかったその格安のホテルなのだが、内装も人工温泉も非常に良く、すすめられた居酒屋の料理も非常に美味で、大満足であった。

で、翌月曜の朝にちょこっと出雲大社に「ご挨拶」に伺った後、地道で3時間走り続けてようやく祖母の実家にたどり着く。程なく大宴会のスタート。仕事柄、学生や福祉関係者としか会わない日々が続いているので、「親戚」という共通項のみでつながる皆さんとの再会は、実に新鮮だった。ごく「ふつう」の人々との会話を通じて、自分が視野狭窄に至っていることを痛感。夜は夜で、親戚のおじさんと、こないだのブログに書いた公共工事論について議論。「ひろっちゃんらは頭でそういうかもしれんし、確かに地方もこのままの公共工事ではダメだ、っちゅうことはわかっとるし、模索もしとる。でも、だからといって福祉に切り替えんさい、なんていうのは、田舎の実際としてはそがあに簡単なことではないけぇ」と、地元の建築業に関わるおじさんの一言は、重みがある。こういう重みとどう対峙するか、が問われるなぁ、と想いながら、ビールが進むこと、進むこと。

そして昨日の火曜朝には、あわただしく祖母宅にも別れを告げて、京都に向かう。6月に転倒したので本調子ではないそうだが、でも元気な様子の祖母に出会えたのが、実に嬉しかった。しかも、おみやげにありがたくも米を一袋、祖母特製の高菜漬けやらっきょう、梅干しまでもたんまり頂く。よーく浸かっていて、本当に美味しい。こういう美味しいものを頂けるなら、車の移動でも仕方ない。おまけに、京都まで全く道路は渋滞せず、すっと5時間ほどでたどり着いた。だが・・・難関は、最後に待っていた。京都で長めの午睡をして、名神に乗ったのが夜9時過ぎ。大垣で渋滞だから、と地道に降りたのが失敗だった。岐阜羽島を過ぎたあたりで、地道が全く動かなくなる。なんじゃこりゃ、と思っていたら、花火大会! しかも、終了後の渋滞なので、楽しみもなく、ただ道が混むばかり。ここを抜けるのに1時間以上かかり、身も心もグッタリ。その後、中央道のドライブもかなりしんどく、我が家にたどり着いたのが今日の朝2時半。最後の最後に、帰省ラッシュの醍醐味を心身共に味わい尽くしてしまうとは・・・。

なるほど、倍のお金を払うと、その分苦痛が半減されるのですね、と最後に実感。だが一方で、偶然立ち寄った蕎麦屋があたりだったり、祖母の手作りの味を持ち帰れたり、という役得もあった。ま、それならば、この苦痛も帳消しにできるかな、と思ってしまうから、また今度も車で行くのでしょうね。こうして、庶民的発想に基づく庶民的行動で、庶民的結論にいたり、結果は「民族大移動」の波にさらわれっぱなし、のお盆休みでありました。で、明日から二人とも仕事だし、ふう。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。