ぶれない軸

 

日曜日以外に休みが取れたのは実に久しぶり。ここしばらく、日曜夕方は合気道なので、なるべく日曜日の予定を開けようとすると、結果的に土曜日は仕事で埋まっていた、況や祝日をや、である。

その合気道は、昨晩が年内最後のお稽古。7時半まで長々続く会議にイライラしながら、終了後、すぐさま道場に直行する。20分遅れで練習に合流したので、結局1時間しか稽古出来なかったが、実に楽しい。終了時に先生から来年の月謝袋!を渡され、今年の月謝袋も一緒に返される。5月から始めたので、8ヶ月分のはんこが押されていて、少ししみじみ。この8ヶ月の間に、週1回を週2回に変更し、熱心に通うようになっている自分がいた。そして、稽古納めの昨晩も、足を刺すような寒さの道場で、投げられたり、新たな型に挑戦しているうちに、すっかり汗だらけ、となる。そういう至福なひとときを過ごせるようになったことに、誠に感謝である。

で、帰りがけに、もともとこの合気道の道に導いてくださり、昨年度まで仕事上でもご一緒させて頂いていたツチヤさんから、「仕事も合気道も同じで、軸がぶれていない、というのが大切なんですよね」と言われる。ここ3年ほど続けている仕事の場で「ぶれない」という評価(お世辞?)をして頂いたことに恐縮しながら、改めて「軸がぶれない」とは何か、を考えてみたい。

合気道において、未だによくわかっていないが、コマのように軸足がきっちりとした上で、上手な回転をしていくことが大切だ、と教わる。しかし、コマと違うのは、相手の動きに合わせて重心も移動しながら、しかし身体全体を軸として、姿勢をしゃんとして、その軸に沿った動きが大切だ、というのである。これは、仕事の現場でも、もしかしたら関連性があるような気もする。

例えば、県の障害者福祉に関する特別アドバイザーを引き受けたとき、一緒にアドバイザーをさせて頂いている今井さんと二人で議論して、主軸にしたのは「当事者主体」と「当事者の権利擁護支援」であった。この二つの軸は、常に自分の頭の片隅に置き、講演だけでなく、どんな方々との議論の場でも、ずっと何度も繰り返し言い続けてきたことだった。何か暗礁に乗り上げそうになると、その言葉を思い出し、軸とずれていないか、を考えながら、仕事をしてきた。

ただ、「当事者主体」にしろ、「権利擁護」にしろ、抽象的な概念をそのままにしていても、仕方ない。時と場合によって、相手や状況によって、現実と理念をどのように絡ませるか、が問われる。合気道が組み手と自分の二者関係で軸を作りだすように、現実と理念の二者関係の中で、軸が機能するかどうか、が決まるのである。その際に、自分が現実と理念の間に入って、つまり留め金(=軸)として両方がかみ合うようにぶれなく回すように、バランスを取ることが求められる。だがこのとき、現実を理念に極大化するのでもなければ、逆に理念を現実にこじつけるのでもない。両者の違いを意識しながら、そのかみ合うポイントを探り、理念(=合気道で言うなら型)の軸にそぐう形で、現実の変容(=相手への技が決まる)を実現していく。

ただし、その際にその現場現場によって異なるツボというか、変容ポイントをきちんと見つけて、その部分に効果的に働きかけない限り、どんなに力を入れても物事が動かない、というのも、合気道と特別アドバイザーの実践で似ているような気がする。あくまでも、変容するポイントを体得し、その部分に技がかかるように、練習をすることが求められる。現場への関わりならば、何がそこで求められているのか、を、五感を総動員して把握することが求められているのである。この部分も、普段から練習を重まだ、練習を始めて8ヶ月だけなので、中途半端な分析しか出来ないが、日々学ぶことの多さにワクワクしている今日この頃、と言える。仕事でも、合気道でも、早く「ぶれない軸」が欲しいなぁ

そうそう、世間は気が付けばクリスマス。我が家では、今年も恒例の「鳥一の丸焼き」を購入して、その後立ち寄ったいそべ酒店では、シャンペンに赤ワイン、それに県内産ブドウを使ったグラッパまで、仕入れた。しっかり呑む前に、今から頂き物のゆずを風呂に放り投げて、ゆず風呂でほっこりする予定。その後は、いつもより早いスタートの、ミニパーティー、である。極楽な休日となった。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。