「構造変動」と「自民党をぶっ壊す」

土曜日の昼にサンフランシスコを発ち、15時間あまりかけて、日曜の夕方にようやく我が家にたどり着く。16時間の時差は、行きは一日得した気分にさせてくれるが、帰りは一日損した気分になってチャラとなる。

成田空港の付近が悪天候で上空でも迂回、着陸後も30分以上待たされ、結局機内に11時間あまり。で、その後なんとか甲府行きのバスに間に合い、バスに揺られて3時間半。二列シートのバスでも、エコノミーシートの飛行機よりは遙かに楽ちんだった。機内ではずっと本を読んでいてあまり寝られなかったので、ぐったり寝込んでいる内に、あっという間にもうお馴染みになった甲府市内へとバスは戻ってきた。それにしても15時間移動すると、まだ身体は移動しているような感触が残っている。

で、かえってきて、お風呂に入ってから、選挙速報をつけながら素麺をゆがく。機内では昼食と夕食らしきものを食べ、バスの中でもビールとつまみでまどろんでいたのだが、我が家に帰って無性に素麺が食べたくなって、「島の光」を二把ゆがく。ズルズルとすすっておなかも落ち着いてきたので、今回の自民党圧勝という選挙結果をぼんやりと考えてみる。偶然機内で読んでいたある本の一節が、改めて浮かび上がってくる。

「構造が不安定であることと、構造が変動することとは同義ではない。構造変動が開始されるためには、現行の構造のどの部分がどう問題を抱えているかを識別し、必要な改革プログラムを設計してこれを実行に移す必要がある。さらに構造改革の結果、機能要件の充足が実現されたか否かを評価点検する必要がある。こうした作業を担う自己組織化層がシステムに内蔵されていなければ、構造変動へと向かう力が蓄積されても、実際の変動は可能にならない。構造不安定は構造変動の必要条件にとどまる」(今田高俊著「自己組織性と社会」東京大学出版会 p91)

今回の選挙で一番ビックリしたのが、投票率の高さだ。67%で前回を7ポイント以上、上回る、とは、正直思っていなかった。下げ続けた投票率を見て、もう二度と上昇することはない、と悲観的見方さえ、僕は内心抱いていた。なので、とにかく投票率が上昇したこと、これは国民の関心度が高まった、という一点だけでも、今回の選挙で評価されるべき事だと思う。まだ、みんなまだ匙を投げきってはいないのだ。

だが、これで小泉政権が「構造安定」化するか、といえば、それも違うと思う。なぜならば、小泉総理の言う「構造改革」なるものが、果たしてどのような「結果」を生み出すのか、まだ明確になっていないからだ。その意味ではいくら300議席近くを確保しても、現状が「構造不安定」状態にあることには変わりない。彼の言動の「実際」について、それを評価点検する時期になって初めて、その構造の真価が問われるのであろう。

小泉首相の言う「構造改革」が、名実共に本当の「改革」であれば、有言実行であり、有権者の支持という追い風を受けて、政権の安定やポスト小泉政権へのソフトランディングをもたらすであろう。だが、彼の「改革」がもし表面的な言葉だけのものだと国民の目に映った時には・・・それは政界再編を含めた「構造変動」の波に与野党全体が飲み込まれる、大きいなる「構造改革」が始まるのかもしれない。そういう意味で、投票率の再びの上昇から見ると、政局の流動化は、今後もかなりの割合であり得る。そういう点で、今回の総選挙結果は、非常に「構造不安定」状態である、ということだ。もちろん今田氏のいうように、「構造不安定は構造変動の必要条件にとどまる」。だが、これに実際の政策への評価、という十分条件が整えば、これからの首相の舵取り如何で、一気に「構造変動」へとつながるかもしれないのだ。

恐ろしいのは、「変人」小泉氏の胸中に、どこまでの意味で「自民党をぶっ壊す」という意味合いがビルトインされているか、という部分である。今回の自民党大勝と守旧派の一層が、彼の意味する最終目的なのか、それとも本当の意味での「ぶちこわし」まで、これから控えているのか・・・。ここしばらく、余談は禁物だ。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。