元気を出して

今朝もほったらかし温泉の露天風呂にいた。

昨晩は山梨に来て初めての、我が家でのお食事会。同僚お二方をお招きして、午前様までワイワイと歓談を続ける。奥さまの勤め先の近所のお肉屋ですき焼き用の肉を仕入れ、アペリティフにはスパークリング、そしてメインにはフルボディの赤ワインで、るんるんと盛り上がる。仕上げに県内産のグラッパまで出す頃には、もうトロントロン。色々しゃべって、大変楽しい会であった。Mさんからは美味しいどら焼きのおみやげまで頂く。今日、妻と共に堪能させて頂きました。ありがとね。

で、ワイン3本を3人で開けたので、よく考えたら一人一本の計算。当然、お客様をお見送りした直後、歯磨きだけかろうじてして眠り込んだので、朝起きたらギトギトべとべと。今日はオープンキャンパスで模擬講義の予定も入っていたので、このままではいかん、と一念発起!?して、朝から奥さまといそいそほったらかし温泉に出かけたのだ。今朝は時折小雨が降りながらも、富士山がバッチリ見えた。なみなみと注がれたお湯の向こう側には、すすきと富士山、そして甲府盆地が拡がる。何という雄大かつ豪華な借景。見とれているうちに、あっという間に一時間は過ぎていた。帰りにまた例のトマト屋で1週間分のトマトを仕入れ、いったんおうちに帰る。朝食後、スーツに着替え、大学に。

オープンキャンパスでは、30分で模擬講義をする。普段の3分の1の時間で、しかも受験を考えている高校生の皆さんに何をお伝えしようかな、と思案したあげく、普段の講義と趣向を変え、社会保障全般の話を、図解を元に皆さんと考える、というスタンスをとってみる。一昨日、パワポで作り込んだ資料だ。そして、せっかくの機会なので、大学における授業のエッセンスも伝える。100%をその場で理解する必要はない。自分の中で、問いが生まれるきっかけになればいい。○×で答えが決まっていない、現実の社会問題を扱う場合には特に、問題解決や課題構築能力が問われる。なので、答えを覚えるだけの暗記型勉強から、課題発見・方策思考型の考える練習を大学でしてほしい。そのために、視野狭窄にならずに、鳥の眼で全体のマッピングをしながら物事を考える訓練を続けてほしい・・・。お節介おばさんかもしれないが、若い皆さんへのメッセージは次から次へと出てくる。それと、社会保障の問題を絡めながら、マイクを皆さんにむけながら話していると、あっという間に30分は流れ去った。

ありがたかったのは、その後模擬面接をしていたとき、授業を聞いて興味を持ってくださった学生さんが何人か声をかけてくださったこと。3割4割しかわからなかったけど、興味が持てた。その言葉がすごく嬉しかった。僕の仕事は、ある意味で学生さんの中に「疑問」と「興味」を抱かせることである。すると、100%わかる話しかしない、というのではなく、「なんかようわからん部分もあるけど、めっちゃ興味があるし、もっとそのことについて知りたい」というモチベーションに火をつけることが出来れば、教員としての職務は全うできた、と思う。そういう意味では、手前味噌かもしれないが、昨日今日とお話しさせて頂いた高校生の皆さんの何人かに、「気になる」「知りたい」火をつけられたのかもしれない。もしそうだとしたら、そういう機会を与えて頂いたこと、そしてその場で話を出来たこと、に感謝したい、と素直に感じた。そして、模擬面接の場で真っ直ぐ僕に向かってくれる高校生の皆さんと出会って、改めて大学教員としての責任と自覚を痛感する。皆さんのこの真摯な姿に、授業を通して応えたい、そう思いを新たにした。

オープンキャンパス終了後、さすがに疲れておうちで一寝入り。汗をぐっしょりかいて1時間ほど眠ると、だいぶすっきりした。その後、ミュージックフェアをつけながら、昨日の宴の後かたづけにいそしむ。島谷ひとみや徳永英明が歌う竹内まりやの曲を口ずさみながら、30分近くかけて山ほど食器を洗う。こういう時に、スウェーデンのように大容量の食器洗い機があればなあ、と思ってしまう。でも、「元気を出して」など往年のヒットソングを大声で歌いながら食器を片づけていると、気分もすっきりしてくる。よく考えてみると、彼女の歌は不倫がテーマの曲も多い。でも、歌詞よりどちらかというと全体の流れで彼女の歌が好きなので、気にせず歌っている自分がいる。最近そういえばカラオケにも言っていないなぁ・・・。あと「元気を出して」のカバーで今日出てこなかったのは、最後のサビの部分のハーモニー。Impressionという竹内さんのアルバムでは、最後のコーラスを山下達郎と竹内、そして薬師丸ひろ子がハモっています。特に、その中でも薬師丸さんの部分が秀逸。今日のミュージックフェアではそこを省いていたのが残念。まあ、あれを再現するのは難しいかもしれないけれど。でも、妙にあの高音が懐かしく感じた。そういえばあのアルバムを借りたのが高校3年の時。そして、それから一回り年を重ねて、今日はその12年前の私、相手に講義なんぞしている自分がいた。改めて、年月がたったんだなぁ、としみじみ感じる。

食器を洗って、買い物に出かけたあと、我が家でささやかな宴。今日は奥さまのお誕生日なので、山梨の白ワインとキムチ炒めで乾杯する。改めて、この1年間の激動ぶりについて話が深まる。実のところ、昨年の10月15日には、山梨に引っ越す、なんて思いもよらなかった。改めて、一年間の様々なご縁や、激動の日々に思いを馳せる。そして、たった半年前まで奥さまの稼ぎで食べさせて頂いたことに深く感謝する。次の一年が、彼女にとってもっと幸せで、より充実した日々になることを、心から願うバタであった。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。