枠組みに変化の兆し

山梨に来て、自分の視野が変わろうとしている。

以前なら「これは自分に関係ない」と済ましていた、色んなジャンルのことが気になる。それは仕事柄、山梨の地域福祉を少しでもたくさん知りたい、という事情ももちろんある。だが、それだけじゃはない。明らかに、以前の僕に比べて関わりを持ちたい範囲が増えている。なぜこんな変化が起こっているのだろう。色々あるだろうけれど、二つの大きな要素は、この山梨で、専任講師で働き始めたから、という理由だろうと思う。

スウェーデンで暮らしていたとき以外は、出張での短期間の調査以外は関西がフィールドだった。その僕が、山梨という新たな土地で、腰を落ち着けて根を張ろうとしている。新しい土地で色々知りたい、と思ったときに、関西だったら、例えば僕が住んでいた西宮一つにとっても40万都市であり、とっても把握できない。だが、山梨は全県で人口が90万弱、甲府なら20万都市だ。規模が小さく、コンパクトにまとまっているから、逆に言えば色々な範囲での出会いに突き当たりやすい。すると、新たなジャンルの開拓の際、人づてに紹介してもらって訪れた場所で、別のジャンルのNPOの人々も後で聞いたら顔なじみ、という場面がこれまでにもいくつかあった。つまり、比較的お顔の見える関係が築きやすい、というのもあるかもしれない。

また、これまでは仕事の掛け持ちで、「タケバタといえばバタバタ」というのを、ある種自分の売り文句にもしてきた。だが、大学での常勤職となって、時間的・精神的にもセカセカしなくなり、より多くの事を色々見てみよう、という余裕が出来たからかもしれない。そして、30にしてようやく物事を見る視点が定まり始めたから、色んな新しいジャンルの分野でも、ブレなく自分らしく眺めてみる、ということが出来るようになったのもあると思う。自分の芯がしっかりしていないと、会う人会う場でその場・人の雰囲気に飲まれ、自分自身がアンコントローラブルになりがちで、それが嫌だから「関わらない」という選択肢をしていた部分も僕の中にはあったと思う。それが最近、大学に軸足をしっかり置いて、落ち着いてきたから、色んな現場でも余裕を持って新しいことに飛び込んでいき、その場で「即興演奏的ディスカッション」をするのがすごく楽しくなった。

こうして考えていくと、単に視野の幅が広くなった、だけでなく、僕がモノを見る枠組み自体に変化が生じているような気もする。ただ、この枠組みの変更は、今後どのように育っていくのか、までは現在進行中でまだわからない。とはいえ、枠組みの変化にわくわくしている自分が、すごく嬉しかったりする。これって実は20代前半以来の枠組み変更なのかもしれない。そのとき果たせなかった夢を今度こそ実現し、その後失敗した同じ轍を踏まないように、しっかりと歩んでいかなくちゃ、と最近感じている。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。