飛び込みと自家撞着

気がつけば秋真っ盛り。でもタケバタは自宅で引きこもり、である。

今月末が締め切りのアメリカ報告書が全然出来ていない。ので、今日明日と缶詰、のはずなのだが・・・。その前に、恐ろしいほど自分の部屋が散らかっている。これを何とかせねば、やる気が全くでない。今朝は2週間ぶりに二度寝も出来て熟睡はバッチリ。昼頃活動を開始し、2時間近くかけて、捨てる、処理する、メールする、電話する、クリーニングを出して取りに行く・・・などをしていた。そう、完全引きこもりではなく、近所までは出かけたのです。秋晴れの気持ちのいい青空、近くの山々はようやく色づき始めた。で、おうちに帰ってさらに整理を進めていると、気がつけばもう午後3時。

今日はお休みの奥さまが「鳥一」で美味しい唐揚げを買ってきたので、そうめんを茹で、ようやっとお昼ご飯。2人とも腹が減ってイライラしていたが、ご飯を食べたらようやっと落ち着く。奥さまは何だか頭が痛いようで再びお休みになり、僕はきれいさっぱり整った部屋で仕事の準備。半年前に書いていた「中間メモ」を元に、さてこの先どうしよう、と逡巡する。

で、逡巡しているうちに、肝心の仕事に関する集中力が切れてきて、メールを見たり、ネットサーフィン、そして読書ブラブラ・・・としていると、もう気づけば外は真っ暗。あかんがなぁ!の心境である。これって、受験生シンドローム、とでも言いましょうか。勉強しなきゃいけないのに、集中できず、ぼーっとしているうちに時間が流れ去り・・・というおきまりのパターンなのだ。一定のクオリティのお仕事を求めて、それが出来ないでいる自分にイライラして、最初の一歩が踏み出せず逡巡しているうちに時間が流れ去る、これってそういえばどこかで見たような・・・。

昨晩、仕事から帰ってきてクタクタになりながらこのブログを書き上げ、風呂に入って「さあ、ビール」と思ったが、冷蔵庫には一本もない!! 悲嘆にくれ、ふてくさりながら、焼酎ロックを作って久しぶりにボンヤリ深夜番組を眺めていた。あるバラエティ番組で、女性タレント3人に目隠しをしたまま10メーターの飛び込み台までつれて来て目隠しがはずされ、初めてその状況を認識する。そんな状態で、目隠しをはずしてから何分で下まで飛び込めるか、を実況する、まあわかりやすい番組だ。で、一人目の女性芸人は、下を見て逡巡しているうちに恐怖が全身に伝わり、飛び込み台の先端で文字通り「固まって」しまっていた。その後、大声で気合いを入れたところで、最後の一歩がなかなか踏めない。結局40分くらいたって、スタッフや他の出演者のじれったさを肌で感じたのか、仕方なしに飛び降りた、という始末。三人目のタレントも、同じような顛末だった。

だが、二人目のタレント(水野裕子)だけは違った。目隠しをはずされ一瞬とまどうも、ストレッチを十分行った後、「そろそろいいっすか?」と尋ね、その後すぐに何の逡巡もせず、いきなりドボン。番組的には本当は面白くない(だってスポーツタレントをビビラせて普段の活躍との落差を楽しもう、という趣旨がみえみえ)だろうが、彼女の行動は、なるほどなぁ、と思わせるものだった。だって考えて見てくださいよ、他の2人のタレントだって、どうせ飛び降りなければ番組的に「使ってもらえない」というのはわかっているはず。なのに「飛び降りなんてムリだよう」とマジでビビっておられたとしたのなら、それは明らかに戦略上の失敗だ。だって、「怖いと感じるほどの時間的余裕を自分で作ってしまった」から。

ある状況下で、それを遂行する以外に今日のお仕事が終えられない、というセッティングの中で、「怖い」という余計な事を入れてしまえば、結局心理的負荷が増えるばかりで、何の解決策にもならない。だって、「怖い」と考えたところで、収録中にその番組から降りることは出来ないからだ。ならば、怖いというファクターに全身を支配されないうちに、グタグタ考えないで、さっさと飛び込みなりなんなりすませた方が、心理的にごっつう「楽」だからである。しかしむろんそこは腐っても芸能人の皆さま。もしかしたら、そんなことは織り込み済みの上で、「普段の強気の私との落差がテレビ的にオイシイ」などと演技されている可能性もあるのだろうけど・・・。そんなことを、焼酎ロックでボンヤリした頭で感じながら眺めていた。

で、何が言いたかったのか、というと、今のタケバタに戻れば、最初の一歩に逡巡していてもしゃあないのである。だって、放っておいても報告書は書かねばならない。ならば、つまらなくても、稚拙でも、何か書き始めないと、永遠に終わりは来ないのだ。そして、スタート時期を延期すればするほど、考察する時間的余裕を自分で削っているだけだから、結局はためらった時間分、クオリティが下がる可能性があるのである。クオリティの高さを希求して逡巡するうちに、その高さを保障する時間を削る、これでは自家撞着そのものだ。

と、ここまで書いて、自分を追い込むタケバタ。さて、アップロードして、報告書モードに戻りますか。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。