今週から大学が再開され、ブログの更新の間もない一週間であった。
なにせ授業は最終回を迎えるし、テストの準備に来年のシラバスの締め切りも迎え、それに加えて会議なども目白押しだった。毎日やるべきことをトットコとっとこやっているのだが、次々に課題は続く。しかも来年度のゼミ面接に来た学生さんとついつい話し込んでしまったために、それ以外の仕事を片づけていたら、夜もどっぷりになってしまうのだ。
だが、今日はそんな学生さんとの語らいの中から、様々な発見があった。
まず、お昼には二年生のゼミの発表会があった。今期のゼミテーマは甲府のバリアフリー。学生たちが自分たちで車いすに乗って、バスや電車に乗って様々な体験をしたり、他県との比較などをした結果を発表していた。ただ、その場所が、大学ではなく高校であった。そう、今年のゼミ生たちは、「バリアフリーの普及啓発」のために、成果を中高生の前で出前授業する、「キャラバン隊」を組織していたのだ。もちろんこれらの現地調査や発表のまとめ原稿、中高生に配る冊子の印刷、キャラバン隊をさせてくださる学校へのアポイントメント、そしてキャラバン隊の司会進行はすべて彼ら彼女らが考えている。タケバタは、最低限のアドバイスをするだけの、産婆役である。
ゼミの一年間の集大成の一つである、このキャラバン隊をみて、またその後彼ら彼女らと学食で話をしながら、しみじみと感じた。「すっごく成長したなぁ」と。
最初、このゼミを始めた時は、福祉の基本的なことを知ろう、と新聞や文献を読み、みんなで意見を発表する、というスタイルだった。だが、それでは次第にみんなのテンションも下がっていく。何かやれることはないかなぁ、このままだったらゼミもつまらなくなるな、と僕も思っていた。そんな矢先、車いす体験の話題がゼミで持ち上がり、それをうちの大学独自の学生支援である「学生チャレンジ制度」に応募することになったのが、5月中頃か。その企画書作りから自分たちでやり始めて、活動資金として10万円頂いた後、彼ら彼女らの試行錯誤が始まった。ちょうどそのころお会いしたある方に、「大学生だったら自分たちで何でも出来ますよ」と助言されていたことも、頭の片隅にあった。
なので、ゼミ生には以後、徹底的に自分たちで考え、行動してもらうようにし向けた。リーダーを決め、そのリーダーを中心に議論してもらった。班分けをして、各班ごとの役割分担の中で実際の車いす体験などの企画・実践もしていった。
実際はスルスルとうまくいった訳ではない。途中でゼミ自体が中だるみになったり、夏休みに結局みんなが都合つかず集まらなかったり、で作業が大幅に遅れることがあった。休み明けに一度、タケバタから皆さんへ檄を入れたこともある。「このままだったら10万円返さなあかんぞ。どないするんや」と。でも、だからといって僕が介入するのは出来る限り最低限にしようと心がけた。受験生と同じでやるのは学生自身、である。僕は彼ら彼女らが躓いた時、どこでどうつまづいたか、の原因を一緒に立ち返って調べ、その大本を取り除く方法をみんなに助言し、彼ら彼女らがそこから解き放たれ、独り立ちしていくのを支援する役割である。これなら10年間やってきた塾講師の経験が即、活かされる。なので、この塾講タケバタのスタイルで、「締め切りまで何週間あって、いついつにこれをしていないと報告書が出来ない。だから、そこから逆算すると、来週までにしなければならないことは何か?」を学生に考えてもらう、逆算的思考法を伝授した。これは受験生とまるっきり一緒。
こういうコツを伝えると、彼ら彼女らは、中だるみ停滞状態から脱し、再び歩き始めた。そして、その後は「1月末の報告書締め切りに間に合わせるために」を合い言葉に、再びスパートが始まる。なので、後期の、特に10月終わり頃からの2,3ヶ月は、見違えるように成長していった。当初はいろいろヤイヤイ僕も口を挟んでいたが、もう最近ではほとんど口を挟まなくても、勝手にみんなで議論している。今日もキャラバン隊の直前に僕の研究室で話し合っていたのだが、僕は他の仕事をしている間に、みんなワイワイがやがや言いながらも、結構まじめに考えあい、打ち合わせをしている。こういう用意周到さなんて、最初のころなかったよなぁ、と思うと、学生の皆さんのこの一年の成長ぶりに、本当にしみじみと感動させられるのであった。「すっごく大きく成長してるよなぁ」って。
そうすると、教員タケバタの役割は、彼ら彼女らの実践の「場」をどのように提供し、はぐくみ、何らかの成果を自分たちで作り上げていくように持っていくか、ということになってくる。これは大変だけれど、できあがるとすっごく楽しい。塾講師時代も、英語の授業は10時半や11時に終わっても、その後学生さんたちと本気で語り合いながら、彼ら彼女らの未来作りを支援してきた時代を思い出す。場は塾から大学に変わっても、同じことをしているんですなぁ。
こういう嬉しい瞬間があるから、彼ら彼女らと一緒に格闘するのはオモロイのである。来年度もどんな出会いの中で、どういう方向に場が育っていくか。今から楽しみである。