暑気あたり?

 

昨日は何だか疲れがどっと出てしまった。

大阪から帰った翌日は大学でドタバタ働き、土曜日がソーシャルワーカーの皆さんへの「半日研修」。午前中は家で締め切り目前の仕事をパタパタ打ち込んでいて、昼過ぎに現場に着いたのだが、暑いせいか妙に汗がダラダラでる。身体もだるい。そう言えば、朝からお腹がすこしゆるい状態だった。でも、何か食べないとエネルギーが沸かないので、現場の近所の定食屋で黒酢あんかけ定食を食べながら、資料を読み込もうとする。おかしい、全く頭に入ってこない。むむむ、疲れているんだろうなぁ、と諦めて、少しフラフラしながら現場へ。その時点では、講演を始めたら何とか持ち直すだろう、と高をくくってた。

実はたまーにしんどくて、しゃべり出す前にテンションが低い時もある。だが、口から出任せ男の真骨頂!?、しゃべりはじめれば、勢いが付いてきて、しゃべり終わる頃にはすっかり快復、ってなことも少なからずある。だから、今回もそのモードなのかしら、と思ったら、さにあらず。講演でしゃべりはじめても、滑舌が悪い。舌がまわらない。最後まで言い切れない。一応前の日にパワーポイントでストーリーを作っておいたので、何とか話をつなげていけるが、いつもの講演のように、話しながら枝葉をつけていく、という事がうまく行かない。だいたい講演原稿なんて作ったことはなくて、しゃべりながらキーワードを思いつき、あちこち寄り道しながら筋を練っていく、というのが僕のパターンなのだが、頭に靄がかかっているようで、全然筋が見えてこない。こうなると、パワポで作った筋に必死にしがみつくしかない。急に視野狭窄になったようで、脂汗も出てくるけど、とにかく時間通りの講演時間で内容は話し終えて、休憩に入った瞬間、主催者の方に伺ってみた。

「何だか支離滅裂なことを話していませんでしたか?」
「いえ、いつものようによどみなくお話しでしたよ。でも、あまりに水も飲まれないので、大丈夫かなぁ、と思いながらみていましたけど」

あ、そういえば、水分を取っていない。その日は夏が再来したように、暑くなっていた。もしかしたら、暑気あたりなのかもしれない。急いで残りのお茶を飲んで、自販機にもう一本水を買いに行って、ガブガブ飲んでみる。まだフラフラは残るけど、少しすっとしてきた。

そして、演習を終え、発表後の講評時には、何とかいつものタケバタに戻る。論点整理と最初の話との接点、それから最後に持って帰って頂きたいことを数珠繋ぎして、まとめをすることが出来た。この部分こそ臨機応変力が試されるので、靄がかかっていては、それこそ支離滅裂になる。何とか復帰出来ていたので、事なきを得て、とにかくほっと一息。せっかく夕食会の席にお招き頂いたが、すいませんと謝って家に帰る。パートナーから、日程管理の甘さを指摘される。まさに、その通りなので、深く反省。それにしても、講演時にあんなに言葉が出てこない、というのは、まるで辞任直前の安部首相と同じようだ。

週末朝のニュースバラエティー?番組では、「安部首相は無責任」という論調で一致していた。確かにそうも言えるが、でも、体調不良や入院の話を聞くにつけ、「ごく普通の人だったんだよな」と思う。他人にそそのかされたら「増長する」「有頂天になる」。プライドが高いから「高楊枝」の振りをするけど、ほんとのところ悪口を言われたら「めっちゃ傷つく」。思い通りに事が運ばなくて「地団駄を踏む」「腸煮えくりかえる」。こういった事が同時多発的に重なると、「にっちもさっちもいかなくなる」。そう、僕も含めた普通の人が踏むプロセスを、首相というポジションの安部氏が普通に踏んだ結果、耐えきれなくて辞任を選んだ、そんな「普通の人」だったんだな、と思うのだ。

ボタンの掛け違えは、「普通の人」が「普通でない職」についた後も、「一皮むける」ことが出来なかったこと。その理由は「お友達内閣」にあるのか、「派閥の冷ややかな領袖」にあるのか、ご自身の「能力の限界」にあるのか、あるいは何らかの陰謀なのか、わからない。でも、「普通ならざる」ポストについて、「豹変」しなければ耐えきれない職責を、「普通の人」のまま1年過ごしてしまったから、ストレスも溜まるし、喉も通らないのだ。そういう意味では、安部さんにはある意味「お気の毒様」、である。ただ、そういう「普通の人」を日本国のコントロールタワーの最高司令官に据えてしまった私たち自身も「お気の毒様」であることには変わりないのだが。

少しここしばらく働きすぎて、僕自身も「普通」に「くたびれた」ので、「普通の休暇」を今日はのんびり過ごそうと思う。でも、後一週間の夏休み期間で、授業準備に学会の準備、もう一つ発表にと考え出したら、「普通」に「とほほ」なのだけれど。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。