ブログの更新が滞りがちになるハードな季節が到来した。秋はみっちり仕事が多い。今日は最終のワイドビューふじかわで、甲府からの帰還の車内。パソコンの合間に、難波のジュンク堂で買い求めた『ヤシガラ椀の外へ』というベネディクト・アンダーソンの自伝を読みふける。古典的作品である『想像の共同体』はちゃんと読んでいないのだが、小学生時代からの「自伝」ファン、としては、仕事疲れにるんるん読むにはちょうど良い。それにしても、3泊4日のツアーもなかなか濃密だった。
そもそも、旅の始まりは金曜日。福山で講演させて頂く事になったのだが、その前に京都駅で打ち合わせ。以前私が書いたレポートを読んで『納得のあまり、首が取れるほどうなづいてしまいました』と仰ってくださった方と、あるプロジェクトについての議論。この私のレポートは、社会運動の理念に基づいてスタートした団体が、その運動の一環として障害者へのサービス提供をはじめ、その規模が拡大する中で、サービス提供の「すべき事」に雁字搦めになってしまい、運動の理念を追求出来ず、組織的にも疲弊していく、という実態を解明したもの。このレポートに普遍性がある、という頷きの評価を頂くのは、研究者としては有り難いが、運動へのシンパシーを持つ一市民としては、大いなる憂慮の気持ちを抱いてしまう。自分が出来ることは何か、を議論しながら、考える。
実はこの課題は、今度国際学会で発表する事にして、ここ最近そのフルペーパー作りにウンウンと唸っていた。唸る、と言えば、これ以外にも、今日が〆切の国内と国外の学会発表のエントリーもそれぞれ重なっていて、文字通り“死に物狂い“な日々で書いて、何とか投稿も完了。東京のMさんには、また個人レッスンをして頂く。本当に、偉大なる友人には感謝してもしきれない。
で、京都から「のぞみ」に乗り換えて出かけた福山では、市の労働組合が主催した、福祉系職員の皆さんを対象とした研修。この間、山梨や三重で感じてきた、政策形成過程における自治体福祉職員の役割や課題について、お話しさせて頂く。政策課題の「読み解き」や「編集」過程を、自治体内部のデスクワークで処理するのか、住民の声に基づいた協働を時間をかけても目指すのか、で、その後のアウトプットが大きく違ってくる。現状の「福祉計画」のたぐいが、コンサルティング会社に「丸投げ」した結果、少なからぬ自治体で、作成者以外誰も目を通さない「紙くず」と化す危険性にさらされている実態にあって、真っ当に計画を作ることの大切さの話をした場面で、多くの方々が頷いてくださった。人口40万という中核都市で、都会ではないけれど、きっちりと住民の声に基づいた政策を作り出したい、という職員の皆さんの気概を大きく感じた研修であった。
そういう良いリスナーにかこまれ、ついつい1次会から2次会までハシゴし、ホテルに帰ったのが午前1時。シャワーだけ浴びて速攻で眠り、翌朝は6時半おき。9時過ぎから心斎橋で次の打ち合わせのため、レールスターのサイレントカーに乗りこむ。ほとんど眠らなかったが、ぼんやりしている内に、あっという間に新大阪。疲れているときに、2列シートは、本当に有り難い。
で、心斎橋で大阪のMさんと、打ち合わせもそこそこに、積もる話をあれこれしている内に、あっという間に先方が出立する時間に。たまにこのブログを覗かれるMさんから、「また本屋に行くの?」と呆れられながら、13時半の近鉄特急の時間まで、なんば花月の向かい側のジュンク堂にやはり吸い寄せられる。本当は、梅田のブックファーストかジュンク堂に行こうと思ったのだが、今回はこちらにして大正解。サクサクと8冊ほどの大収穫。今回はキャリーケースがあるから、と、本は送らず全部持ち帰ることにしたら、久しぶりにジュンク堂の袋をもらった。そうそう、Mさん、たまに東京や大阪に出張すると、大規模書店で本の「立ち読み」が出来るありがたさを実感するのです。確かに普段はアマゾンや大学の丸善の本屋を通じて注文するけど、それは必要な本の「ピンポイント作戦」。でも、対象をあまり特定せずに、ブラッと書棚を駆けめぐるからこそ、出会う一冊もあるのです。今回のアンダーソンの本なんて、まさにその範疇。そういう出会いを求めて、相も変わらず、フラフラ本屋に彷徨うのでありました。
その後、買った本に満足して、アーバンライナーの中で熟睡している内に、津に到着。その土曜の午後から、日曜、月曜も、まあ普段より3倍くらい濃縮した日々。半日のシンポジウム(日曜午後)に、2時間程度のミーティングや委員会が3つ、今日の午後は鳥羽市での仕事だし、その間土日とも打ち上げもあった。しかも、そのどれも、内容が濃くて、数珠繋ぎで、チャレンジングな課題。疲れた車内で一つ一つの内容を書いていたら息切れしそうなので、省いてしまうが、まあとにかく「濃厚」でありました。
で、あと10分ほどで甲府なのだが、今日は家に帰ったら、待望のあるモノとの「ご対面」が待っている。待ち遠しくてワクワク、なのだが、そのレポートは、次の機会に譲るとしよう。