キンドルと「坊ちゃん」

今日は久々のぐうたら日曜日。旅の疲れが思いっきり溜まっていたので、思いっきり休むことにする。

なんせ16日に帰国して、17日は午前と午後に講演が一つずつ、18日はオープンキャンパスで模擬講義もあったのだが、どれも滑舌がよろしくない。パワポを事前に準備していた17日はそれでもまあまあ乗り切ったが、高校生とのやり取りを中心にしていた18日には、言葉を噛んだり言い間違えたりする。僕は割と舞台に上がったら強い方で、事前資料が無くてもその場のやり取りの中からまとめていくことは、まあまあ出来る方だから、こんなに噛み噛みになることはあまりない。やはり、疲れが全身に溜まって、言語運用能力にも悪影響を与えているのだろう。「こりゃ、あきまへん」と、早めに退散する。夜はニンニクと生姜をたっぷりすり下ろした鰹の刺身に、ミニチゲ鍋をシャンペン→白ワインで頂き、どっぷり眠る。今日も二度寝、三度寝して、ようやく復活。
そういえば、海外に行っている間に、キンドル3が届いていたので、昨日はそのセットアップ。本当は海外に持って行きたかったのだが、間に合わなかった。ロンドンでもipadを沢山見たけれど、僕のライフスタイルには、too muchのような気がする。何せ、国内であれ海外であれ、出張には必ずアンドロイド携帯とノートPCは持参する。ならば、メールやネット、パワポにワードにツイッターといった常用機能は殆どそのどちらかでカバー出来る。だが、こないだの出張でも一番かさばったのが紙資料と本。現地でもらう資料を捨てる訳にはいかないので、どうしても日本から持ってきたPDFの資料や、ガイドブック・イギリス本・趣味本…は捨てて帰らないと20キロ制限に引っかかる。今回も都合3~5キロ分くらいは捨てたはずだ。
こういう事態になるのであれば、キンドルにある程度、本や資料を放り込んでおけるのは非常に合理的。実際にツイッターで、それを実践しておられる同業者の文章を読み、初期投資の安さ(ipadの3分の1)と回線料がタダなのも決め手になって、キンドルにする。
で、そのキンドルだが、まだ肝心の洋書購入には至っていない。どの本から読もうか、が決まっていないから。新聞(ヘラトリ)を無料お試ししているが、まだちゃんと読んでいない。だが、早速活用したのが、青空文庫から落としてきた夏目漱石の「坊ちゃん」。実験のつもりで落としてきたのだが、読み出したら面白くて、昨晩読み終える。日本語表示も非常に綺麗で読みやすい。「坊ちゃん」を読んだのはもう20年くらい前だが、きっとその頃は、書かれている諧謔性の半分も理解していなかっただろうなぁ、と思う。今頃読むと、ちょうど面白く読めるのだ。まあ、松山人の悪口を書きすぎ、という気もしなくはないが・・・。
「坊っちゃん」は改めて読むと、非常にドライブのかかった小説だ。幕間に色んなスノッブな横文字をちりばめながらも、そんな横文字も分からぬ突猛進型の主人公の赴任先でのドタバタを、青春活劇のように書き進めていく。故郷を離れてはじめて乳母がわりだった清の有り難さがしみじみ実感されたり、派閥抗争に巻き込まれながら山嵐と徐々に友情を交わすようになったり、体裁を繕うだけの組織人と闘ったり、といった青春ストーリーが、100年以上の月日を越えた今日の社会的コンテキストにもそのまま当てはまる、これぞ「不朽の名作」と思う。思い浮かべてみれば、どんな組織にだって、赤シャツや狸、野だいこ的な奴はいるよね、と。
勢いづいたので、明日からの出張には「我が輩は猫である」を落としていこうと思う。これも高校生時代には何だか横文字がさっぱり分からず読めなかったが、もしかしたら一応漱石先生と「同業者」になったので、少しは理解出来るかも、と思ってみたりしている。あと、「阿Q正伝」とか「山月記」なども落としてみた。青空文庫は基本的に著作権が切れた作品が置かれているので、これまでちゃんと出会えていなかった明治期の小説に沢山触れてみようと思う。もしかしたら、キンドルは英語本よりこっちの方でヘビーに使いそうな予感、である。早く和書もキンドルで落とせるようになればいいのだが(特に雑誌は)。
というリハビリ文章を書いていたら、少し頭の解毒作用も出来てきたようだ。
実は帰国直後は、出張中にネットが使えない間に来ていた仕事、あるいは出張中に取り組めなかった仕事、も含めると、9月末〆切の査読の書き直しやら論文執筆やらの仕事が溜まっている事に気づき、かなり焦っていた。それと疲れと多忙が重なって、言語運用の乱丁に繋がっていたようだ。昨日の土曜日など、焦って朝5時頃から起きてみたけれど、キンドルの設定が終わったら二度寝して、結局オープンキャンパス前には何にも仕事が出来なかった。
そう、焦っていても、疲れていたら集中出来ないのが自分の癖。うちの妻に言わせると、「あんた、そんな事も気づかへんなんて、アホやなぁ」と。そう、疲れている時ほど「アホ」なんです。ならば、まずはバッテリーチャージが何より先決。こういう時は、美味しいものを沢山食べて、よく寝て、一日休養するに限る。キンドルも充電しないと使えないように、バタ君も充電しないと頭が働かない。そういう基本的な事は、特に疲れたり焦ったりすると忘れやすい。それを「アホやなぁ」とお知らせしてくださるパートナーに感謝しながら、今日はぐーたら寝て食べて、をしていた。さて、夕方には半月ぶりの合気道。みっちり身体を使って楽しんで、明日からの出張にモードを切り替えるとするか。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。