忘れずに考え続けるために

 

先ほど、公開初日の「ユナイテッド93」を見てきた。

この映画や「ユナイテッド93」の事件に関しては、実に様々な角度から、正反対のコメントや指摘がされている。それらの評価を紹介する前に、僕の感想を少し述べておくと、「2時間全く息つく間もなかった」「映画終了後の数時間後の今も、心にズシンと残っている」ということである。

この映画や事件に関する主な賛否のコメントは次の通り。
Takuya in Tokyo:「ユナイテッド93」(2006)
「ユナイテッド93」は究極のジェットコースター映画
今日も明日も映画三昧:「ユナイテッド93
ユナイテッド93便をめぐる「ダイ・ハード」なミステリー
『ユナイテッド93』@ぴあメールマガジン/シネマ
ピッツバーグでの墜落旅客機の美談は本当なのでしょうか
MovieWalker – 「ユナイテッド93

真相がどうだったのか、この映画のストーリーと違う何かがあったのか、今となっては全くわからない。ただ間違いなく言えるのは、ユナイテッド93便の乗客全員が死亡した、という事実である。どこまでが真実で、どこまでが虚偽で、あるいは何らかの陰謀があったのか、を的確に判断するには、あまりにも多方面の情報で溢れすぎている。ただ、そこに居合わせた乗客、ユナイテッド93の行方を追い続けた管制塔の職員、のリアリティだけは、どのようなストーリーが背後に横たわろうとも、そのリアリティの現実性は少しも損なわれることはないと思う。この部分だけでも、この映画には十二分過ぎるほどの価値があると思う。

誰が正しくて、誰が間違いで、どの説が真実か、の虚偽判断は容易ではない。ただ、多くの遺族のインタビューに基づいて、分厚いリアリティを集積して作られたこの映画が、一見の価値があることだけは、紛れもない僕にとっての真実だと思う。その上で、この事件を忘れずに、考え続けることが、私たちには必要とされていると思う。そして、イランの泥沼化、イスラエルとレバノンの戦争激化、今週のロンドンのテロ未遂事件も含めて、この911にまつわる様々な出来事を、決して忘れることなく、様々な立場から、様々な角度で、しつこく考え続ける必要がある、それだけはハッキリした映画であった。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。