方法論3冊

 

今週になって、朝、車の窓ガラスが凍り始めた。いよいよ本気の冬である。早速今日、スタッドレスタイヤに交換する。夏はめちゃくちゃ暑い甲府であるが、冬はとんでもなく寒い。2週間前からは石油ストーブも全開だし、暖冬とか何とか言われても、寒いことにはかわりない。

ここ最近、方法論の本をまとめて数冊読んでいる。いよいよ今年はじめて卒論学生を担当していて、来月末に向けて佳境に入ってきたので、彼ら彼女らへの指導のためが半分、でも半分は自分のためでもある。最近新たに買ったり読み直して面白かった方法論の書籍を三冊、挙げてみる。

「医療経済・政策学の視点と研究方法」(二木立著、勁草書房)
「社会福祉研究法」(岩田・小林・中谷・稲葉編、有斐閣)
「実践フィールドワーク入門」(佐藤郁哉著、有斐閣)

は先月出た新刊で、は読み直した本である。

医療政策について独自の視点で次々と切り込む著作を続けている二木氏の方法論がどっさり詰まったを読んでいると、彼がいかにストイックに勉強しているか、がわかる。一日8時間以上勉強している日が、年間を通じて100日ある、というのは、学内外の仕事をしながら、ということを考えると、とんでもない感じだ。一兵卒で、本来時間があるはずなのに、自分を振り返って、一日8時間、みっちり勉強できている日が月に何日あるだろう・・・。やはりある程度のストイックと、割り切りと、きちんとした時間マネジメントの気持ちがないと、こうはならないだろうな、と希望もショックも受けた本だった。

の有斐閣アルマシリーズは、なんだか良い本が多い。社会福祉の方法論の本について、今まで結構たくさん買ってきたが、日本語で書かれている本として、わかりやすくて、かつ深いポイントまで押さえられているのがこの本。実際に学会誌に掲載されたいくつかの論文を元に、どういうデザインを元に、データをどんな風に分析して、まとめていったのか、を実例を元に分析・説明している。こういうタイプの追体験可能な事例が出されていると、読み手にとっても勉強しやすい。ここ数年間で、質的調査に関する方法論の本が爆発的に増えているが、こういういい本が出たのは、実に喜ばしい。惜しむらくは、一番方法論で悩んでいた数年前の博論執筆時に出会えていたら・・・であるのだが。

で、は、おとといのゼミの最中に、急に思い出して、手にとってみた本。買った当時は、つまみ読みだったのだが、今回全編を通読してみる。実に味わい深い本だ。サブタイトルが「組織と経営について知るための」とあるように、一橋の商学部で教えている社会学者が、自身の学部・院生にも伝わりやすいように、と、経営学や組織論で出てくるフィールドワークの古典を元に、フィールドワークやインタビューなどの方法論についてわかりやすく解説している同書。組織論や経営学とフィールドワークの接点、というのは、僕自身が今まさに研究している部分とも重なり、ケースとして紹介する文献も、キーワード解説も、実に興味深い。今、方法論的に悩んでいたある研究の重要なヒントももらえたし、この本を通じて気になる本を何冊か早速アマゾンに注文した。こういう「バッチリ合う」本に合うと、実にうれしい限りだ。

方法論では、本当に苦労している分、その分野の本は乱読している。

来月くらいから、新たに現場調査もはじまるので、その前に、こういう形で方法論について再定義や反省をしておくことは、自分の中での整理としても、実によい。今週末も、来週末も出張だったり、と、なかなか落ち着いて「8時間の自習時間」をとれない分、いかに自分のあいている時間をうまく活用できるか、が問われている。某先生みたいに、酒は飲まないので朝まで勉強、というのとは対極的に食べること・飲むことが大好きな竹端にとって、結局真っ当に頭が働いている時間の集中度を増す、ということでしか、問題は解決できない。ま、マシーンにはなれないしね。

なので、明日の朝の「あずさ」でも勉強しよう、と鞄の中に書類を詰め込むタケバタ。でも、結局バーベル代わりにしかならなかったりして・・・。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。