経営手腕とバランス

 

少しおなかがヘッコミはじめた。

今日久しぶりにプールに行ったおり、自分の段腹を何気なく更衣室のロッカーで眺めてみて、そう思った。帰ってパートナーに見てもらっても、やっぱり少ししまってきた、という他者評価も受ける。体重は81.2キロと昨日と大差ないが、少しずつ贅肉が筋肉に移行し始め、やせるための環境が整いつつあるようだ。何という吉兆。明日は教職員テニスクラブなので、更に頑張る気がわいてくる。ようやく鼻声も直ってきたしね。

で、今日はおうちの仕事の一日。家事仕事だけでなく、ジムに行ったついでに中道の農産物直売所まで野菜を買いに出かける。新鮮なにんじんや青物をたんまり買い込む。最近きゅうりが高いので、ぬか漬けの材料がなすびばかりだった。たまには違うものがいい、という家人のリクエストもあり、ちょうどぬか漬けに最適な、小さめの土つきにんじんを一袋100円でゲット。その他、マリーゴールド?の花束やら、豆やらどっさり買い込む。野菜は盛大に食べているので、週に一度の大量買い出しは大変重要なルーチンワークなのだ。お昼は買いたてのネギとほうれん草を使ったおうどん、夜は菜っ葉と肉の炒め物、と大活躍したが、どちらも新鮮で、大地のエネルギーを満喫できる味であった。

そしておうちでは、締め切りが明日と迫った、二年生のゼミ論集への文章をサクサクと書く。運動によい食事にと気分がリラックスしていたので、2,3時間で8000字強のメッセージがスルスルっと出てきた。その一部をご紹介してみよう。

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 思い返せばこのゼミで、特に後期以後は、私は本当に脇役でした。各グループの代表やゼミ統括の担当者に個別のアドバイスをするものの、ひとたび私が枠組みを示せば、後は学生達で主体的に方法論を開発し、進行管理やまとめに至るまで自主的に作り上げてくれました。これは報告書作成だけでなく、啓発活動で多くの大学・専門学校・高校を訪問させて頂いた時も、彼ら彼女らの主体性はきらりと光っていました。
 ではゼミ担当教員の私の仕事は何か、それは「場のマネジメント」に尽きると思います。この概念の提唱者でもある伊丹は、「場のマネジメント」について3つの要素で説明してくれています(伊丹敬之著「場のマネジメント」NTT出版、p5)。
・経営とは、個人の行動を管理することではない。人々の協働を促すことである。
・適切な状況設定さえできれば、人々は協働を自然に始める。
・経営の役割は、その状況設定を行うこと。あとは任せて大丈夫。
 ゼミ経営でも全く同じです。19人もの大学生の「個人の行動を管理すること」は、とうてい私には不可能です。班構成や人員を何度も変えたり、時にはある班の活動にアドバイスすることがあったものの、あまり細かな口出しをすることを控えていました。その最大の理由は「協働を自然に始める」のを待ちたかったからなのです。そのために、様々な状況設定の最適化にむけた試行錯誤はしましたが、「あとは任せて大丈夫」と、彼女ら彼らのがんばりを信じていました。結果、ゼミ生全員が、この一年間で一皮も二皮もむけて成長する、そんな現場に立ち会うことが出来たのです。

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そういえば当ブログで紹介するのを忘れていたが、この二年ゼミの活動は、山梨日日新聞でも取り上げて頂いたので、よろしければそちらもご覧くださいませ。

意味ある活動を学生達にしてほしい、その願いを、実際に実践に移すためには、ゼミ経営者である私自身に「経営手腕」が問われる。伊丹氏が指摘するような、「適切な状況設定」をする手腕、そして「人々の協働を促す」手腕、それらがないと、ゼミは崩壊する。何度も危うい場面にさしかかりながら、何とか経営の初心者の私が最後まで乗り越えられたのは、ひとえに「タケバタという経営者は危ない」と思って自発的に「状況設定」に参画し、協働を主体的にすすめてくれたゼミ生達の行動のたまものである。それとも、「これはタケバタはあてにならんは」と思わせる(見切りをつけさせる)のも、ある種の「経営手腕」と言えるのだろうか!?

何はともあれ、こういう文章を書ける瞬間が来ると、一年間の大変さも吹っ飛ぶ。これだから、教育は面白い。あるブログでアメリカの大学で昇進しようと思ったら、「卓越した著作、ほどほどの管理運営、最低限の教育」が肝心、という記事を見たが、さにあらず。こんな楽しいことをしない人生は実に寂しいし、もともと私の給料の出所でもある学生達にあまりに失礼な発言だ。引用したブログの著者も書くように、結局は研究と管理運営と教育の三者のバランスが大切なのだ。そういう意味で、教育の経営だけでなく、研究と管理運営も含めた、自分自身のバランス良いマネジメント(経営)が大切であるし、そしてどれも楽しめることが、もっと大切なんだよなぁ。今改めてそう思う。

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。