2013年の三題噺

いよいよ今年も、今日まで。

先週末に早めに実家&墓参り1000キロツアーを果たして、昨日は疲れも溜まって「あまちゃん祭り」を10時間見ていたので、やっと年賀状の印刷を果たせたのが、先ほど。ブログ読者と年賀状の送り先は恐らく殆どかぶらないので、年賀状にも書いていた、今年の三題噺を、少し長めに書いてみよう。
①二冊目の単著が出る
何度もブログやツイッターでも言及しているが、11月に二冊目の単著、『権利擁護が支援を変える-セルフアドボカシーから虐待防止まで』を現代書館から出して頂いた。去年に引き続き、二冊目の単著である。「精力的ですね」と言われることもあるが、確かに一冊目の刊行直後から、この二冊目を何とか2013年度中に出したい、という一心で取り組んで来た。
同書のあとがきにも書いたが、大学院生の頃から「権利擁護」については考え続けてきており、様々な媒体に書き続けた原稿を集めたら、既に4年前の段階で、単著一冊分以上の原稿は書きためていた。その当時、単著が一冊もなかったので、当初はこの本を先に書き上げる「つもり」だった。だが、社会学の大家の恩師から、「一冊目が、全てを決める。いきなり寄せ集め論文で本を出したら、その後、誰も読んでくれなくなるよ」と、ありがたいご助言を頂き、全くその通りだったので、この原稿はお蔵入りしていた。その後、合気道やダイエット、「魂の脱植民地化研究」との出会い、そして3・11の衝撃と様々な出来事に遭遇する中で、気がつけば2012年に『枠組み外しの旅-「個性化」が変える福祉社会』の方を、先に上梓することになった。
そして、この『枠組み外しの旅』を上梓した後だからこそ、視座と根性が定まった。権利擁護について考える上で、支援と支配の近接性や、権力構造の分析など、際どい事を書く必要がある。業界慣れしていくに従って、数年前はそこを「自主規制」していた自分がいた。だが、『枠組み外しの旅』は、そのような自主規制や自らの囚われを「意識化」すると共に、そこから自由になって、より本質的な構造を直視する事を目指した、ある種の理論書であり、自己変革を社会変革とつなげる為の道筋を書こうとした書籍だった。その本を書いたからこそ、権利擁護に関しても、これまで書いた原稿を再度点検し、徹底的に手を入れ、いくつかは全く一から書き直すことによって、魂を込めた権利擁護論を仕上げることが出来たのではないか、と思っている。
あと、一冊目は、自分の世界観を構築する為の文章でもあったため、ゴリゴリと鋭角的な文章だった。「講演はわかりやすいのに、本は取っつきにくい」と批判されることも、少なからずあった。一冊目は理論書的に書いたが、二冊目は実践現場に重ね合わせる形で書いたので、なるべくわかりやすく書こう、と四苦八苦した。予備校時代からお世話になっている田平先生に徹底的に校正に付き合って頂き、半泣きになりながら、言葉をわかりやすく言い換える努力をした。お陰で、「一冊目よりわかりやすい」という評価も頂け、少し胸をなで下ろしている。でも、初版1800部を何とか売り尽くすための、講演時の地道な手売り活動は2014年も続けていくつもり。権利擁護関係での講演は、お引き受けしますよ(^_^)
②合気道で初段を頂く
二冊目の単著と共に、今年の二大目標だったのが、実はこの合気道の初段の審査を通過すること、だった。あこがれの袴を目指して、の稽古に精進していた。
思い起こせば、合気道に入門したのが、2009年の5月。入門当初はうぶな事をブログに書いているが、その時の「楽しさ」はおかげさまでずっと続いている。いや、少しずつ技を身体が覚えるようになってくると、出来る範囲も広がり、楽しさやワクワクがむしろどんどん深まっていった、という方が正しいだろう。週1回の稽古も2回、3回と増えるようになり、いつしか稽古の時間を何とか空ける事を日程調整の柱にし始めていた。
そして、昨年あたりから、「袴を着ける」という目標が、現実的になりはじめた。だが、有段者への審査は、白帯・茶帯の時代の審査とは、格段にレベルも内容も異なる。剣や丈などの武器技が増え、自由技もたくさん出来なければならない。だがそれ以上に、基本の技に対する正確さや丁寧さが、級の時代とは比較にならないほど、求められる。それまでは、何となく力技で投げていた、その所作の一つ一つが、問われる。合気道とは、気を合わせる道。つまり、相手と接点を見出しながら、相手と自分の気を合わせながら、うまく導く必要がある。その際、基本動作をきちんと一つ一つ丁寧に運用していくことで、その気が合う基本が出来る。その部分こそ、実は上達するための、最も基本であり、最も難しい壁なのだ。この1年くらい、その壁を前に、ウンウンと唸っている日々だった。
もちろん、7月の昇段審査の後も、劇的に上手くなった、なんてことはない。でも、袴をはいて、初心者の方と一緒に稽古をする中で、自分が先生や同門の先輩に言われ続けてきたことを、気づいたら口にしている自分がいる。「もっとリラックスして(落ち着いて、ゆっくりと・・・)」とは、僕が常に指摘されてきたこと。それを、初心者の方にお伝えしている自分がいる。僕は、人に教えている時が、最も学べる、OJT型の人間なので、実は合気道の学びは、初段から深まりそうだ、とワクワクしている。
③山登りを始める
合気道で基礎体力と足腰の筋肉がついてきたようなので、発作的に5月くらいから、山登りを本格化させた。実は職場のハイキング隊で以前から何度か誘って頂いていたのだけれど、一冊目の単著が出るまでは、なかなかご一緒出来なかった。だが、今年は少し自分のための時間も確保しようと、月に一度、山登りをスタートさせ、これが結構楽しく、ハマリ始めている。
5月 茅ヶ岳(1703m)→6月 鬼ヶ岳(1783m)→7月 瑞牆山(2230m)→8月 東天狗岳(2640m)+甲斐駒ヶ岳(2965m)+赤岳(2898m)→10月 乾徳山(2031m)→11月 小楢山(1712m)
こうして記録を改めて振り返ると、結構沢山登っていますね。ちなみに東天狗岳以外は、全て一人で登っている。
山梨って、実は3000m級の高度な山から、1500mくらいの手頃なハイキングコースまで、沢山の山登りが出来る場所だったことに、今まで住んでいて、全然気づいていなかった。職場の同僚にハイキング隊に誘ってもらい、でも仕事も一杯一杯だったので、なかなかそこから一歩が踏み出せなかった。でも、単著二冊目に取りかかり、合気道も初段審査の近づいた5月の連休辺りに、発作的に「山登りって楽しいかも」と思い立ち、アウトレットでハイキング用のシューズを買い求め、発作的に登り続ける。合気道と同じで、これもすごく楽しい。で、色々装備を少しずつ揃えながら、東天狗岳を登る際、ハイキング隊の隊長に「タケバタさんなら一人で登れるんじゃない」と太鼓判も押され、調子に乗って甲斐駒ヶ岳と赤岳を夏に本当に制覇。すごく嬉しかった、のだが、軟弱なハイキングシューズでの下り坂は随分と危険で、右足の親指と薬指に血豆を作り、結局親指の爪は剥がれて、今小さいのが生え替わりつつある。そんなアクシデントにも見舞われた。
その後、本気のトレッキングシューズも買い直し、その後も登り続けている。合気道に続き、二つ目のハマる趣味が出来てしまった。まあ、そうは言っても、基本は日帰りで天気の良い日にしか登らない、という軟弱スタイルだけれど、それも良し。実は1年前にハイキング隊の隊長に甲斐駒ヶ岳の麓まで連れて行ってもらうも、整備不良で引き返す、悔しい思いをしたが、今年はそれに完全にリベンジ出来た。
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あと、地域包括ケアシステム関連の仕事で、色々な現場の人々とのコラボレーションが面白くなったり、いろいろ書き足りないことはあるけれど、これくらいにしておこう。

来年も、もっとワクワク出来ますように、と願掛けして、今年最後のブログとします。

みなさま、良いお年をお迎え下さい!

投稿者: 竹端 寛

竹端寛(たけばたひろし) 兵庫県立大学環境人間学部准教授。現場(福祉、地域、学生)とのダイアローグの中からオモロイ何かを模索しようとする、産婆術的触媒と社会学者の兼業。 大阪大学人間科学部、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。山梨学院大学法学部政治行政学科教授を経て、2018年4月から現職。専門は福祉社会学、社会福祉学。日々のつぶやきは、ツイッターtakebataにて。 コメントもリプライもありませんので、何かあればbataあっとまーくshse.u-hyogo.ac.jpへ。