図解と潤滑油

今日は朝から東京で勉強会。国際的な障害者の差別禁止条約締結に向け、女性や子供、人種など、これまでに履行されている他の差別禁止条約に関わるNGOからのヒアリングの場に出かけ、色々勉強していた。その場で、今日はせっせと図を書いていた。

事のきっかけは「図で考える人は仕事ができる」(久恒啓一著、日経ビジネス人文庫)。図解すればものごとがクリアに見える、という筆者の主張は結構わかりやすく、ここしばらくのマイブームなのだ。昨日も社会保障のお勉強をしていて、読んだ本を図解でまとめてみると、あーら不思議。結構ビギナーでも簡単に整理できて、しかも問題点もクリアにわかってくるのだ。なので、今日も朝から子供の権利条約や女子差別撤廃条約などの履行状況に関するNGOの発表を聞きながら、せっせこキーワードを元に図解を作っていた。そして、意外や意外、図を書いているうちに、自分の興味関心や問題点もきれいに整理できてきたのである。この図解ブームは、ここしばらく僕の中で続きそうだ・・・。

整理しながら気づいたのが、世界的な差別禁止の流れにしても、いかに国内法、そして自治体の条例といった、国内・地域レベルでの実践が出来るよう、NGOと行政、そして地域が連携していけるか、ということ。これは、今の自立支援法案とも重なる。つまり、地域を耕さねば、豊かな障害者支援も、権利保障もへったくれもないのだ。これは、今日の話を聞きながらも強く思った。この地域の豊かさについて、日本らしい何かをどのように構築していくのか、が、どの分野のNGO/NPOでも問われてくるのだとおもう。そして、このときに、日本に昔からあった互助・連帯組織である民生委員や町内会、自治会などと、こういった新しい(しかも多くが西洋文化だと思われている)NGO/NPOのムーブメントがどう連結するのか、ここが問われている、と切に感じている。

そんな真面目なお勉強をして、甲府に帰り着いたのが午後7時半。そのまま、駅から近くの居酒屋に直行する。今日は二年生ゼミの飲み会なのだ。初めてのゼミコンパだったが、皆さんちょっとずとエンジンがかかってきて、もりあがってきたようだ。色々おしゃべりして、僕の家の近所に住んでいる体育会所属の学生さんと早退する。何でも彼の寮は9時45分に点呼があるそうな。僕も今日は朝6時起きでくたびれていたので、財布にタクシー代だけ残して、あとは有り金(と言っても少ないのですが・・・)全部置いて、退散する。彼ら彼女らがお金を気にしながら飲んでいるのを見て、僕も学生時代にピーピー言っていたのを思い出した。ま、今だって貧乏には変わりないのだけれど、こうやって学生時代に先生方に一杯おごって頂いたのだから、少しは次の世代に還元せねば、と思う。帰りのタクシーで件の学生が、「こういうゼミの飲み会ってすごく楽しいですね。息が合ってきたような気がします」と言ってくれたのが、すごく嬉しかった。この2年のゼミではプロジェクトをやっていて、大学から補助金までもらったのだが、それを後半年で上手に成就させるには、ゼミ生の一致団結が必要不可欠なのだ。それをするためにも、今日の飲み会が、いい潤滑油になれば、と願っている。

潤滑油、といえば、明日は3年ゼミの飲み会。こちらは、今後の就職活動の成就も祈願して、の別の意味での潤滑油となるべく企画された飲み会。僕は財布が軽くなり、体重は重くなるが、まあこれも業務の一環。ジムと授業で動き回って、体重は軽くしなきゃ、ね。でも財布の軽さはさて、どないしまひょ・・・。

ラタトゥーユと276枚

トマトの季節が戻ってきた。
6月頃に見つけた、大学の近くの激安ガソリンスタンドの向かい側の農家が、トマトの販売を再開したのだ。

ここのトマトは、本当に目を丸くするほど美味しい。以前ブログにも書いたが、実家やお世話になった先生に送ったところ、どなたからも大好評。僕自身、毎週なくなる度に買いに出かけていた。7,8,9月はブドウの季節なのでトマトはいったんお休み、で、10月から来春の6月まで、トマト販売を再開される、とのこと。道沿いにたてられた「のぼり」を見つけて、真っ先に立ち寄る。おうちの方がいらっしゃって、割れたトマトもたんまり頂いた。これが割れていても、めちゃくちゃ美味しいのだ。早速今晩はラタトゥーユにしてすり下ろしトマトもたんまり入れる。ハッシュドビーフの素もあるのだが、そんなの必要もない位にコクが既に出ている。今は煮込み中だが、早く食べるのが楽しみだ。昨日韮崎の農協直販所で買った地物のニンニク君達や、土がかぶったにんじんもいい役を果たしている。特に、にんじんは皮をむくと、霜降り肉のような美しい文様が現れた。これが美味しくない訳がない!! 飲み差しの赤ワインもドバッと入れて、豚バラ君も大満足のようだ。いやはや、ほんと待ち遠しい。

で、ついでに報告すると、ほったらかし温泉に再び出かけた。朝早くある方から電話を頂いて目が覚めたので、「どうせなら休みだし、朝の露天風呂に浸かりにいこう」という算段だ。これがまあ、気持ちのいいこと。霧がかかっていてご来光、という訳にはいかなかったが、それはそれでよろしい。幽玄なる霧がかった風景と、目の前のススキ、それを眺めながら朝からぼーっとするのも、また格別である。しかも、休日でも人は少ない。ごくらく極楽。

で、休日に疲れも落としながら、一方でちゃんとお仕事もトボトボしている。先週末に社会保障審議会、その翌日に都道府県の障害保健福祉主管課長会議、が相次いで開かれ、国会で今議論されている自立支援法関連の具体的な資料がたんまり出てきた。社保審の資料で5MB、主管課長会議で12MBである。主管課長会議をプリントアウトしたら、276枚!!!あった。これを読むのか、と思うとゲッソリする。だが、今国会での成立と来春の施行を目指して、この資料から厚労省の本気度が伝わってくる。ぱらぱら眺めるが、具体的に減免措置の細かい規則など、施行規則の大枠につながるものがドバドバ出ている。こりゃあ担当者はしばらく寝ずの作業をしてたんだろうなぁ、と思いながら、1時間近くプリンターが発奮するのを見ていた。

で、それを眺めていて、いよいよこちらのスタンスが問われるな、とも感じる。以前このブログにも書いたが、ハッキリ言って276枚を真面目に追いかけていたら、すっかり厚労省の枠組みに居着いてしまうのだ。これが障害者にとってどういう意味があり、障害者の地域自立生活支援を支援する点でどう問題なのか、をしっかり頭の片隅に置きながら読み込んでいかないと、いつの間にかミイラ取りがミイラになってしまうのだ。そのためには何らかの補助線が必要だ、と感じていた時、近所の本屋でまさにドンぴしゃ、の一冊に出逢った。それが、「社会保障を問いなおす」(中垣陽子著、ちくま新書)だ。

何がドンぴしゃって、この本は、今回の厚労省の改革の裏側にある社会保障全体の改革について、「身の丈にあった」「安心感のある」「不公平感の少ない」「わかりやすい」という4つの切り口から「あるべき姿」を解説している。しかも著者は今は政府系財団の主任研究員だが、平成13年度の国民生活白書「家族の暮らしと構造改革」の筆者でもあるのだ。これを読んでいて、ここ数日紙面を賑わせている診療報酬の改正の問題、介護保険と高齢者医療の相乗りの問題、など社会保障「改革」の問題がまさに取り上げられているのだ。なるほど、この国民生活白書の方向で、今の制度改革が進み始めているのね、という全体像が、この本を読む中で少しずつわかってきた。それと共に、自立支援法案関連の資料を読み込んでいて疑問に思っていた様々なキーワード、あるいは厚労省の切り口も氷解してきた。こういう国策の流れの中で、障害者政策に関しても、経済活力重視と社会保障充実の二つに折り合いを付けられる「皆が仕方ないと納得できるポイント」に落とし込むために1割負担を原則とし、不公平感を和らげる為のホテルコスト徴収、など介護保険改革とクロスオーバーする部分を障害者福祉にも応用し、合わせてわかりやすい制度設計で、何とか制度維持を目指そう、という流れなのだ。

そして、その大きな流れが見えて来たとき、ふと「障害者はこの法案で安心感を持てるのか」という疑問が浮かぶ。つまり、原則1割負担の前提となる所得保障の問題である。障害者の基礎年金6万6000円が安すぎる、という事実に触れないまま、サービス利用料に関する減免措置の議論をしたって、根本的解決にならない。逆に言えば、このポイントを無視して、厚労省の資料をいくら真面目に読んだって、障害者が安心できる社会保障制度への改変へとつながらないのだ。このことを、ちゃんとまとめて伝えていかなければ、と問題点がだいぶクリアに見えてきた。資料を読み込みながら、飲み込まれないように、腹を据えて資料と格闘しよう。でもその前に腹が減っては戦が出来ぬ。そろそろ煮込みも出来てきた。さ、真面目な話はこれくらいにして、美味しいラタトゥーユを頂きますか。でも、ビールかワインを飲んで、このテンションは続くのか・・・。そもそも、276枚を読む気力が残っているのか・・・。

連鎖反応とドーナツの穴

ここしばらく、日々の最低限をこなすのに一杯一杯な日々が続いてきた。

一つには後期の授業が始まってまなし、なこと。講義が二内容三コマに増え、新たな予習に追われていること。これで相当時間的にタイトになっている。先週末以来、お腹の調子も万全ではない。疲れもたまり、口内炎もでき、運動する暇もない。なのにデスクトップのスケジュール帳には積み残しの仕事が、日々累積していく。毎日大学に12時間滞在しても、とにかく仕事が片づかない・・・。どこかでこの連鎖を断ち切らにゃ、と思い、まずは今晩、禁酒にしてみた。ここしばらく、ずっと毎日飲んでいたので、一日くらいは休肝しないと、多分身体さんも悲鳴をあげているのだろう。おかげで放ったらかしのスルメを、酔いつぶれずに書くことが出来る。

その一方で後期になって、以前宣言した授業改革が、少しずつ、功を奏し始めている。前期の課題点を変えるために、いくつかの試みを始めたが、それは今のところどれもうまく進み始めている。明確な姿勢と、裏打ちするデータ、それとコツコツとした予習の積み重ね、という至極真っ当な三種の神器を、半年もして、初めて実践できるようになったのだ。そうやって真っ直ぐ学生さんに向いていると、彼ら彼女らからも、少しずつ真剣なまなざしが返る率が高くなってきた。これだから、真剣直球勝負は面白い。まあ、実のところ年期も経験もない僕には、フォークやカーブの授業展開で的確にポイントを突く、という曲芸は出来もしないので、直球しかないのだが、こうして真っ直ぐな言葉、を誠実に伝えているうちに、伝わるものの深さと広さが少しずつ拡大していけば、と願っている。

今日は珍しく会議がない水曜日だったので、少しは自分の仕事も出来る。いよいよ国会で障害者自立支援法の審議が始まるので、関係者とその関連での打ち合わせ。今日の社会保障審議会や検討会での国の説明の強引さが話題になる。厚労省の優秀なるお役人の皆さんも、実のところ、この強引な展開に、本当は困っているんだろうな、と思う。だって、誰が見ても、今度の法案はあまりにもどぎつく、えげつない給付抑制方策が盛り込まれているからだ。これは厚労省単体の問題ではなく、三位一体改革や700兆円の財政赤字の問題などとリンクした「国策」レベルの問題。厚労省の官僚だって、きっと財務省や政府の「国策」命令にサラリーマンとして従わざるを得ないのだろう。ただ、その財務省や政府に物申せる唯一の立場の国会議員が、どうも大政翼賛会なのか、あるいは初当選組が多いからか、この法案の内実をあまりご存じでない(関心がない)方も少なからずおられる、と漏れ聞く。法案に問題点があり、その作成者である厚労省は「上かの指示」と言われ、その「上」のお目付役である国会議員が不勉強や無関心。ならば、この法案に関しては、誰も責任を問わず、誰も責任が取れない中で特別国会でするりと通過するおそれがある。ドーナツの穴のように真空現象が起きているのだ。で、その真空地帯で、結局困るのは、国会議員でも官僚でもなく、地域で暮らす障害者自身。なんちゅうこっちゃ、と思う。

僕自身はこのことに対して、現状を変えるほどの知力も能力も政治力も、もちろんない。ただ、まっとうな議論が、まっとうにされるように、せめて地域・現場レベルでもお手伝いすることくらいしかない。そう思っていたら、偶然、なのかご縁があったのか、今度は東部地区でこの法案の勉強会をしたいので講師に、という依頼の電話を受ける。前回の東山梨地区での講演の噂を聞きつけて、わざわざお電話くださったのだ。山梨は人口が少なくお顔の見える関係が築きやすい分、福祉関係者が地域の人々を巻き込み、そして自治体の担当者や首長も本気になれば、政府の制度を超える地域の豊かさが構築できる可能性がある、と思う。国レベルが「ドーナツの穴」状態なら、せめてその穴を埋める実体は、地域から作っていくしかない。それを、僕レベルでもお手伝い出来るのなら、えんやこら、と走り回ろうと思う。こうやって首をしめるから、またスケジュール帳には未決リストが溜まるのも目に見えているのだが、まあ、「ほっとかれへん」病にかかったタケバタ、いつものように気づいたら走り始めていた。

豊かな土曜日

今日は久しぶりにのんびり、の土曜日である。

今週から後期の授業が始まり、いろいろ授業関連のゴタゴタまであったもんだから、今週一週間は相当根を詰めていたし、疲れ果てていた。で、昨日の朝から、少しお腹を下し、ちょっと風邪も引きかけていた。昔から季節の変わり目にはよく風邪を引く、見た目とは違い内面は心身共に結構ナイーブなタケバタ。甲府もここ一週間で冷え込み、ついには昨晩、冬用羽毛布団に変えたところだ。今日は衣替えも一部始めたし、夏モードから急に秋モードに変遷しつつある。

そして、「風邪を引いちゃあいけないから」というのを最大の言い訳に、昨日は韮崎まで野菜を買いに出かけた後、午後は最低限の仕事をしに大学へ。月末は決算関係の書類の締め切りなので、どうしても処理をしなければならない。まあ、ついでにあれこれ片づけられなかった残務処理も終え、昨日は早々研究室を後にする。久しぶりに、二度寝を挟んで10時間以上爆睡できた。おかげでお腹の調子も元に戻る。

午後は、先述の通り、衣替えとちょっとばかしお仕事。夏物の服を片づけながら、服装の在庫確認。服はあんまり気にかけていないようでいて、結構な数、持っている事を再確認。これからはあまり無駄に服を買い足すのではなく、一点豪華主義にしたいなぁ、などと夢想する。でも、アルマーニのスーツを買うほどの余裕財産はないのだけれど・・・。寝室のクローゼットがすこしかけすぎできつそうだったので、仕事部屋にスーツをかけるスキマハンガーなるものをホームセンターで買い求める。ついでにフライパンも。某「お値段以上」という宣伝でお馴染みの店でフライパンを3ヶ月前に買うのだが、ハッキリ言ってすぐに焦げ付き、1000円のフライパンでは役に立たないことが判明。今回はテフロン加工の3000円強の代物を購入。早速今晩炒め物に使ってみたが、伝導率が向上したためか、少ない油でもニンニクの炒まり具合が非常に良い。おかげで黒酢あんかけの炒め物は大変美味しかった。

今宵はホームセンターと、酒屋を経由して温泉に出かける。この酒屋では蕎麦焼酎をゲット。以前書いたがふと立ち寄った石和の酒屋で、県内の酒蔵が作る蕎麦焼酎がやけにすっきりとした味で美味しい。僕以上に文句言いのパートナーが満足して、今回は一升瓶を買い求める。あと、その酒屋さんで頂いたブドウが美味しかったことをお店の方に伝えると、「今日もあるから」と、また別品種のブドウを頂いてしまう。なんという幸せ。るんるん気分で、「ほったらかし温泉」へと向かう。地元の人にも有名なこの温泉。ほんとによかった。(例えば以下のHP http://www.navi-city.com/yu/yu2.html

何がよかったって、夜7時頃に出かけたのだが、満点の星空と夜景を眺めながらの露天風呂なのだ。土曜の晩なので駐車場はほぼ満杯なのだが、大変儲かっているようで最近「あっちの湯」と「こっちの湯」という二カ所体制にしたため、たくさんの人が入っていても、ゆっくりつかれる。二年前、スウェーデンに滞在していた折、正月休暇に北極圏のイエリバーレに友人と共に出かけたのだが、あのときの夜景を彷彿とさせる。空気がきれいで、街灯の数が都会ほど多くなく、きらめき方が独特なのだ。ただ、極北で常勤職も決まらない不安定な時期の正月と今とでは、夜景を眺める際の心持ちが随分違うことを、湯に浸かりながら再確認する。あらためてこの二年間の激変ぶりに思いを馳せながら、今の職場への感謝と、これからせねばならない仕事の在庫整理などを、星を眺めながらぼんやりしている。昔から、お風呂に入っている際に様々な整理や踏ん切りをつけてきたタケバタにとって、露天風呂は最適なデフラグの場所。今日も気づけば一時間、ぼんやり様々なフラグメントを解消する作業に当てていた。

こんなすてきな温泉が、ショートカットの無料高速道路(西関東自動車道)を使えば自宅から15分の距離。しかも入浴料はたったの500円! 日の出の30分前から年中無休でオープンなそうなので、朝早く目覚めたら、一度ご来光を拝みに出かけよう、と思う。しかも、運が良ければ富士山も見える、とも。こりゃあ楽しみだ。お風呂で鋭気を養い、自宅でおニューのフライパンで黒酢あんかけを作り、コスパ直送の1000円赤ワイン(プロメッサ・ネグロアマーロ)も上等なお味で、大変豊かな土曜日であった。ありがたや、ありがたや。